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教育ニュース

当面続く医学部の「広き門」

[教育動向]

斎藤剛史

2009/01/05 10:00:00

2009(平成21)年度の大学医学部の入学定員が過去最高となることが、文部科学省の調べでわかりました。社会問題となっている医師不足への対応の一つで、当分の間、医学部の門が広がることになりそうです。各大学の入学定員は、12月中に正式決定する予定です。
医学部の2009(平成21)年度入学定員は、国公私立大学全体で、前年度よりも693人(国立が42大学・363人、公立が8大学・59人、私立が27大学・271人)増えて、全体で8,486人(国立4,528人、公立787人、私立3,171人)となります。これは、医学部の入学定員が最も多かった1982(昭和57)年度の8,280人を上回り、過去最高の規模です。

医学部の入学定員は「医師過剰」の社会的批判を受けて削減が続けられ、2007(平成19)年度には7,625人まで減りました。しかし最近になって、医師の不在を理由に病院をたらい回しにされ、患者が死亡するという事件が起こるなど、医師不足、特に産科医や小児科医の不足が、大きな社会問題となっています。
このため、政府は2007(平成19)年5月に「緊急医師確保対策」として、医学部の定員抑制を解除することを決定。さらに、2008(平成20)年6月の「骨太の方針2008」(経済財政改革の基本方針2008)の中に、「(医学部入学定員を)早急に過去最大程度まで増員する」ことを盛り込みました。

ところが、他の学部に比べても多額の経費がかかる医学部の入学定員増は、大学にとって施設・設備などの増設、教員の増加などといった負担増につながるため、各大学とも当初は定員増に慎重な姿勢を見せていました。政府の「緊急医師確保対策」では、期間が過ぎれば増加分の入学定員を削減することを前提にしていたため、私立大学などが定員増に二の足を踏んでいた、という事情もあります。
このため文科省と厚生労働省は、大学に定員増を強く働き掛けるとともに、医師不足対策として認めた特例の定員増分を、対策期間が終了してもすぐには削減しない、という方針を打ち出しました。いずれは中・長期的な医師の需給の観点から改めて医学部定員の見直しが行われることになるでしょうが、少なくとも当分の間、医学部は過去最高の入学定員が続く「広き門」となりそうです。
ただし、医師の養成には研修期間を入れて最低でも8年かかるため、実際の医師不足の解消はまだ先の話のようです。
また、入学定員の増加を認めるに当たり、文科省と厚労省は、医師不足が深刻化している地域や診療分野の医師養成プログラムの策定、医師が不足している地域での勤務を希望する学生への奨学金支給などの地域医療貢献策を策定するよう、各大学に義務付けているのも特徴の一つです。

斎藤剛史さんプロフィール

斎藤剛史さんプロフィール

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。
日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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