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医師不足から負の連鎖、赤字増加/神奈川県内の15市民病院
- 政治・行政
- 2009/01/05
県内の地域医療を支える市立病院の累積赤字が増え続けている。最近五年間で約一・六倍に膨らんだ。医師不足により診療体制の縮小を余儀なくされた結果、収入が減る「負の連鎖」に陥るケースもあり、赤字体質は一層、深刻化している。状況を好転させる医師確保のため、有識者は「専門性が高められるなど魅力のある職場づくり」の必要性を訴えている。
県内では、横浜、川崎、横須賀、平塚、大和、藤沢、厚木、茅ケ崎、小田原、三浦の十市が計十五の市立病院を設置。〇七年度は各市とも病院事業決算が赤字だった。
〇七年度決算で開院以来、最大となる約十億八千万円の赤字だったのが大和市立病院。派遣元の大学内の異動などで〇七年十月、神経内科と眼科で常勤医がゼロになるなどした結果、医業収益は約五億円減った。
〇八年度は眼科の外来を再開したが、神経内科は再開できず、産科は〇八年十一月からお産の予約受け付けを休止するなど、いまだ厳しい状況にある。市幹部は「医師確保しか収入を増やす方法はないが、自治体だけではお手上げだ」と嘆く。
〇三年度から唯一、四年連続の黒字だった厚木市立病院でも〇七年八月からの産婦人科の休止が響き、〇七年度は約四億三千万円の赤字に転落。産科は再開の見通しが立たず依然、苦しい台所事情が続く。
三浦市立病院も常勤医の減少により産科などで診療体制が縮小し、〇七年度は〇六年度比で約三億円増の約五億七千万円の赤字を計上した。
こうした中、県内の市立病院が抱える赤字の累積額は〇三年度、四百九億円だったが、〇七年度には約六百七十一億円にまで膨らんだ。住民の医療水準を維持するため、救急医療や小児科といった診療科を多くが抱え、赤字になりやすい市立病院。医師不足による診療体制の縮小と、それに伴う収入減にも見舞われ、赤字の増大傾向は歯止めが掛けられそうにない。
公立病院をめぐり総務省が〇七年、「公立病院経営改革ガイドライン」を策定。民間譲渡や診療所化といった再編の在り方を示した上で、自治体に対し健全経営を目指すための改革プランを〇八年度中に策定するよう求めている。
医師不足が市立病院の経営を圧迫する中、城西大学経営学部の伊関友伸准教授は「医師の待遇改善に加え、専門性を高められる研修や指導体制の充実など魅力ある職場をつくるべきだ」と指摘している。
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