東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

当日現場付近に 路上生活者襲撃 高本容疑者、認める供述

2009年1月5日 朝刊

 東京都国立市で昨年六月、路上生活者の男性(64)が襲われて負傷した事件で、殺人未遂容疑で逮捕されたフリーター高本孝之容疑者(36)=多摩市連光寺二=が、事件当日に現場付近にいたことを認める供述を始めたことが、警視庁捜査一課の調べで分かった。同課は四日、高本容疑者を東京地検八王子支部に送検した。

 捜査一課の調べに対し、高本容疑者は逮捕時、事件現場の国立市谷保の石田大橋下について「石田大橋なんて知らない。行ったこともない」と供述していた。しかし、その後、事件当日に高本容疑者に似た人物が周辺の防犯カメラに写っていたことを指摘されると、「写っているなら、そうなんじゃないですか」などと現場付近にいたことを認めた。容疑については否認しているという。

 同課によると、高本容疑者宅から押収した血の付いたジャンパーとシャツが、二日に世田谷区で、別の路上生活者の男性が他殺体で見つかる直前まで捜査員が追跡していた時の高本容疑者の服装と、酷似していたことも判明。その際、高本容疑者は現場近くで自転車を降りフェンスに囲まれた内側の殺害現場をうろついていたという。

 その後、橋脚の死角に入って姿が見えなくなり、捜査員が位置を変えたところ約十五分後に男性の遺体を見つけた。捜査一課はシャツとジャンパーの血液鑑定を行い世田谷の事件との関連を調べる。

◆元日父を訪問、トラブル

 殺人未遂容疑で逮捕されたフリーター高本孝之容疑者が、元日に都外の父親宅を訪問したもののトラブルになり、二日午後には他の知的障害者と共同生活を送る多摩市の福祉施設に戻ってきていたことが、施設関係者の話で分かった。

 世田谷区で路上生活者の男性が殺害された事件は二日夕方に起きている。

 福祉施設を運営するNPO法人の副理事長(39)によると、高本容疑者は元日、都外に住む父親の家を訪ねた。ところが二日の昼すぎには施設に戻り、その際、「(父親が)怒るから帰ってきた。もうどうしようもない」と説明したという。

 高本容疑者にとって父親は、親族の中で唯一、連絡を取り合う人物だといい、副理事長は「本人は父親が好きなのだが関係は良好とはいえない」と話す。

 軽度の知的障害がある高本容疑者は、七、八年前、親から自立するために一人暮らしを始めた。しかし、対人関係をうまくつくれないことによるトラブルが多く、二〇〇四年に新設された現在の福祉施設で生活するようになったという。

 一方、高本容疑者が働いていた多摩市の福祉施設の施設長(54)によると、高本容疑者は約十五年前から通所。施設では古株だった。一人でこなす清掃などの作業が中心で、仕事ぶりはまじめだったという。収入は月約七万円。「問題行動などはなかった」という。

 市内にある作業場で、施設から出るごみの解体仕分けも担当。押収された鉄パイプは作業場にあった。

 自分より重い障害のある人に手作りの弁当を渡したり、職員の子の誕生日に毎年プレゼントを贈ったりする一面もあったという。

 少年時代からよく自転車を乗り回し、週四日の通所も自転車。新宿や府中、調布などまで行くことも珍しくなく、深夜でも自転車で出掛けていたという。

 

この記事を印刷する