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部活と学業:「日本語能力が日本サッカーを変える」

 「あいまいな表現は使わないように」

 「物を言うとき、主語が誰なのかはっきりさせるべき」

 「論理的な判断の根拠を提示するように」

 指導者の要請に生徒たちは、短時間に理論整然と答えるため冷や汗を流す。福島Jビレッジに建設された2006年日本代表チーム・トレーニングセンター「JFAアカデミー福島」の授業現場だ。

 日本サッカー協会(JFA)は「日本語能力が日本サッカーを変える」という独特の発想で、明日の日本サッカーを担うエリートたちを育てている。現在、男子中学生15人(学年別に5人ずつ)、女子中・高校生30人の45人で成り立っている。2011年からは男女それぞれ30人ずつ、定員60人で運営する予定だ。

 このアカデミーの教育課程を見ると、サッカーのエリートを育成しようとしているのか、人文系エリートを育成しようということなのか、よく分からない。ボールを蹴る前に正しい日本語を駆使しなければならない、と大学教授を招いてディスカッションの授業をしており、また田植えや漁業体験、相撲の練習など、さまざまな文化体験を学年別に行っている。一般教育課程は近隣の中学・高校で委託教育をしている。もちろんサッカーの練習も行っている。練習は1日3時間半で、欧州や日本のトップクラスの指導者が基本技術を徹底的に教える。

 特に力を入れている授業は「言語技術」の 向上だ。長文を聞いて文章として再構成する「再話」、短文のうち「5W1H(Who〈誰が〉 What〈何を〉When〈いつ〉Where〈どこで〉Why〈どうして〉+How〈どのように〉) 」の抜けた部分を即座に答える「問答ゲーム」、一つの絵を見て状況を論理的に解釈する「絵画分析」など、日本語を論理的に駆使するための授業が続く。

 JFAが毎年2億円投資している同アカデミーが何を得ようしているのかが気になった。同アカデミーの校長を務めているJFAの田島専務は、技術委員長だった2002年にこのアイデアを出した。

 「ユース代表監督として世界の舞台に出て、サッカーのテクニックよりも、自分で考え対話を通じて問題を解決する能力の方が重要なことが分かった。ドイツやブラジルの選手は問題を自分で解決するのに対して、日本の選手はまず監督の顔を見詰める」

 田島専務は「アカデミーから2、3人だけサッカー選手が出てくればよい。残りは医師や弁護士、農夫など、さまざまな分野でエリートが輩出されるのを期待している」と語った。正直、JFAがなぜこんなことをしているのかが疑問だ。

 「まさにサッカーこそ、常に世界とぶつかって争わなければならない分野。平均化教育、画一教育を行っている日本の教育に対する挑戦だと見てもよい」

 田島専務は、野村総合研究所が主催した「学生小論文コンテスト2008」で同アカデミーの女子生徒が最優秀賞を受賞したことを自慢した。「論文の内容もよかったが、学校で勧めたわけでもないのに、一人で最初から最後までコンテストの応募手続きを行った自立心は称賛に値する」と語る田島専務。毎年男女それぞれ5人ずつ募集する同校には700-900人の志願者が殺到する。

 スポーツエリートの養成は何もサッカーだけに限ったことではない。

 日本は2000年から、政府が「スポーツ振興基本計画」を策定し、スポーツエリートの育成に対する支援を強化している。

 卓球でも「世界最強の中国の壁を乗り越えよう」と、今年からエリートアカデミーを運営している。東京のナショナルトレーニングセンターに宿泊し、近隣の学校で委託教育を受ける方式だ。中学1年の男子生徒6人と女子生徒二人の8人が英才教育を受けている。

 日本卓球協会の前原専務は「従来の方式では世界の壁を越えることができないと判断して始めた。知的能力の低い選手はトップになれないため、学業にも力を入れている」と述べた。選手らは、土曜日は家庭教師に国語や数学、英語など基本科目の補習を受け、日曜日には英会話を学んでいる。

東京=閔鶴洙(ミン・ハクス)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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