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「覚悟の年」日本流を磨け 加地伸行氏×櫻井よしこ氏

1月4日10時39分配信 産経新聞


「覚悟の年」日本流を磨け 加地伸行氏×櫻井よしこ氏

加地伸行氏が「櫻井先生のファンなんです」と話し始めると、櫻井よしこ氏も「私も加地先生を尊敬しています」と応じて、対談は和やかに始まった=東京・大手町の産経新聞東京本社(写真:産経新聞)

 加地 中国の周辺諸国が恐怖感をもっているのは人間の数です。恐怖感が遠慮とかこびるということにつながっている。米国も感じているかもしれない。逆に中国にしてみれば足かせになっている。14億の人間を食べさせるのは無理で、あがいている。むしろ弱点です。中国が日本のご指導を仰ぎたいということを言わざるを得ない研究開発をする必要がある。

 −−中国の独自技術はなぜ発展しないのですか

 加地 中国人学生は留学先の日本とか米国で就職してしまう。帰国しない。これが遅れている理由です。中国人は国家を信用していないからです。日本で生きていけるのに、何で国に帰るかと考えるわけです。国に帰った場合は官僚になる。しかし、技術者は現場を離れて官僚になったら知識は古くなってしまう。日本にチャンスはある。日本は中国に対抗できます。

 −−対中国に限らず日本はさまざまな課題にどう対応していけばいいでしょうか

 加地 年金問題を解決する方法はある。文科省ががんばらなければいけない。保険という思想はもともと日本になかった。不特定多数の人から集めたお金で誰かが助かればよいというのが保険の思想。自分の出したお金が返ってこなくていい。損得を論じるのはなじまない。ところが、日本には独特の相互扶助システムとして頼母子(たのもし)講というのがあった。相互銀行の始まりです。出した金は返ってくる。頼母子講の感覚で年金を運用するから文句が出る。損得のレベルでなく、保険とは何かということを子供にきちんと教育しないといけない。

 櫻井 日本は、国際社会の制度を活用すると同時に日本独自の考えを失わないようにすることが大事です。銀行制度も株式のとらえ方も欧米の制度や価値観をひたすら受け入れてきました。しかし、ここにきて、日本独特のやり方にこそ、救いと利点があることに多くの人が気づき始めた。同じ資本主義でも欧米は会社は株主のものだと考え、短期の経営が主流となります。反対に、日本では会社は経営者や従業員、研究者のもので、今までずっとやってきた先輩世代のものでもあると考えます。ですから会社を永続させようと、中長期の研究開発を進め、内部留保も維持して安泰なものにしようとする。

 こうした日本流のいいところをうまく引き出して磨いていきたいものです。(市場原理主義のような)制度設計を外国から受け入れてひたすら合わせることは必ずしも、日本人の幸せにつながらない。世界の人も日本流のやり方のほうがもっと幸せになると、自信を持って言いましょう。

 加地 まさにその通りです。会社は株主のものでない、先輩から受け継がれたものだ、というのは日本人の宗教感覚につながる。生命の連続ということです。それを強烈に意識するのがわれわれです。高野山にいくと、大阪のいろいろな会社の慰霊塔があります。会社で働いた人はみな一族だという意識です。

 さらに考えを進めると、祖先崇拝です。祖先と自分とのつながり、これが日本人の宗教の大筋です。祖先を大事にするというのは、実は儒教です。そういうことを学校できちんと教育しないといけない。今は、祖先をまつるという大事なことを中心とする求心力が家族にない。これが家族のひび割れの原因です。かつては何らかの意味で連帯があった。それをすべきだ。なぜ、文科省はしないのか。

 櫻井 文部官僚にはそういう問題意識はないでしょう。というより、私は文部官僚がこの国をむしばむ元凶の一つだと思います。

 ■軋轢を注視せよ

 −−日本の社会をよくするためには

 櫻井 歴史を学び、先人の生き方を知ることがとても大事です。先輩世代の日本人が何を大事にしたのか。日本人は、何を守ろうとして生きたのか、何を守って死んでいったのかという価値観を学ぶことが歴史を学ぶことの土台です。

 そのためにもお正月のゆったりした時間を活用して、先人の生き方を示す書物などを読んでほしいと思います。たとえば、石光真清の4部作(中公文庫)を読めば、靖国神社問題への答えはおのずと出てきます。中国や韓国に何か言われても、きちんと答えることができるようになります。歴史の解釈も堂々と意見を言えるようになるでしょう。いかなる他国も内政干渉すべきでない事柄について、冷静に主張することができるでしょう。そういう論陣をはれない政治家や官僚が多いために、日本はだめになっていると思われます。

 加地 その通りです。なぜ「反省しています」と同じ話を繰り返さなければならないのか。反省というのは何を具体的に言うのか。

 櫻井 中国が歴史問題をいうのは日本が一歩退くからです。言い分を通すカードです。

 −−やはり中国との関係は難しいですね

 櫻井 今年は日本にとって覚悟の年になるでしょう。明らかにオバマ新政権は中国にシフトしがちで、中国も柔軟路線で米国との関係を強化しようと最大限の努力をする。両国の政府レベルの波長はあっていく。

 しかし、経済の実態で果たして同じ波長が成立するかは大いに疑問です。中国は知的財産権も認めませんし、アメリカは非常に問題視しています。相変わらず軍事力の増強は不透明な形で続き、人権弾圧問題は北京五輪の後、かえって悪化しています。言論の統制も、異民族への弾圧も同じです。価値観において、中国はますます異形の大国になっている。米中両国間の融和と軋轢(あつれき)がバランスの中に収まるのか、噴き出るのか、注目したいですね。

 ■日本よ自信持て

 −−日本もしっかりしないといけない

 櫻井 ロシアは金融危機でかなり深い傷を受け、ほかのどの国よりも力を落としていく可能性があります。であれば、北方領土問題についても日本がしっかりしていればもう一度、取り返す可能性が出てきます。日本はほかの国に比べて金融危機の傷は浅く、技術力もある。

 だからこそ、政治がそうした日本の長所をてこに果敢に国際社会に日本の存在感を示していければ、展望が開けてくるのです。経済危機打開のために、持てるすべての力を活用する。加えて、日本の技術力をより確かなものにするために、研究開発費には大胆な税控除を実施し、世界に貢献し、日本の繁栄に結びつけるような中期戦略を実施することです。

 −−政治の課題です

 櫻井 経済だけでなく、外交でも政治でも、日本をまともな国にするために政治が一日も早く行うべきことは、本当は憲法9条の改正なのです。けれど、それには何年もかかります。そこで、集団的自衛権の行使を可能にすること、自衛隊を国軍にすることをまず、一番先にしないといけないでしょう。

 加地 日本の覚悟ということでは台湾問題というのが一番具体的な形で出てくるだろう。中国は台湾を無傷で取り込みたい。オバマ政権が中国とのかかわりを深くするなら、日本はもっと台湾との関係を意識的に強くすればいい。それはものすごいとげになる。日本が台湾とのかかわりを深めれば深めるほど中国は武力で台湾を解放できなくなる。日本の企業家ももっと台湾に投資すべきだ。

 櫻井 日台関係をもっともっと深めていく。

 加地 米中が組むなら日台が組めばいい。そういう形の対抗軸をつくるということ。米国も中国が台湾を武力解放するといえば黙っていないから複雑になる。台湾と深い関係をもつことが日本の安全保障にもつながる。しかし、日本政府にその度胸はないでしょう。

 櫻井 しかし、それをしなければ本当に日本が危うくなるのが今年以降だと思います。

 加地 台湾のステータスをあげさせる簡単な方法がある。日本の閣僚が台湾に行くこと。中国に衝撃を与える。

 櫻井 同時に、台湾の閣僚と定期交流する。

 −−しかし、これまでできなかったのは覚悟がなかった

 加地 日本人の中国人に対する恐怖心は一つは人口だが、もう一つある。日本人の壮大な誤解がある。日本人、特にインテリ先生は中国人の顔をみたら、みんな諸葛孔明か孫子にみえる。何か深いことを考えているのではないかと思ってしまう。実は何も考えていない(笑い)。

 櫻井 文化文明で位負けする必要はまったくないのです。

 加地 ところが、日本人は勝手にそういうことを考える。それがだめだ。中国人は目の前の権益以外は考えていない。中国人はものすごく現実主義なのに、日本人は理想主義だ。この食い違いばかりです。

 櫻井 日本の文明と技術に自信を持ち、海洋国家と連帯して、この危機を乗り越えていきましょう。

【プロフィル】加地伸行(かじ・のぶゆき)大阪大学名誉教授、立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所長。文学博士。昭和11年、大阪市生まれ。京都大学文学部卒。同大大学院修士課程修了。台北に留学。甲子園短大学長、同志社大学専任フェローなどを歴任。「論語全訳注」「儒教とは何か」「孔子」「現代中国学」など著作多数。専門は中国哲学史。第24回正論大賞受賞。

【プロフィル】櫻井よしこ(さくらい・よしこ)ベトナム生まれ。ハワイ州立大学歴史学部卒。クリスチャン・サイエンス・モニター紙東京支局員、日本テレビニュースキャスターを経て、フリーでジャーナリスト活動を開始。第26回大宅壮一ノンフィクション賞、第46回菊池寛賞を受賞。著書に「権力の道化」「いまこそ国益を問え」「日本よ、『歴史力』を磨け」など。

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最終更新:1月4日10時39分

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