【エルサレム福島良典、前田英司】砲撃と空爆の閃光(せんこう)がパレスチナ自治区ガザ地区の深い闇を切り裂いた。「シェルターもなく、どこに逃げていいのか分からない」。イスラエル軍の地上侵攻を受けたガザ地区住民は3日から4日にかけ爆音の絶えぬ中、自宅や親類の家などに身を寄せ合い、恐怖の夜を過ごした。
4日、ガザ市内に住む毎日新聞のサフワット・カハルート助手(35)は「経験したことのない恐ろしい夜だった」と振り返った。地上部隊を援護するイスラエル軍の無人偵察機や爆撃機が飛び回る。空爆は夜通し続き、自宅が揺れた。
2~8歳の5人の子供は泣き叫び、臨月の妻イマンさん(30)も12月27日の空爆開始以降、体調が優れない。サフワット助手は「出産準備も、生まれてくる子供のための用意もできていない。どうしたらいいのか」と嘆く。
地上部隊が侵攻したガザ東部に住む親類が4日朝、サフワット助手方に避難してきた。近所のパン屋では空爆下、食料を求める人々の行列ができている。「ガザ住民はパンを買うにも命を懸けなければならないのか」。サフワット助手の言葉に怒りがこもった。
ガザの「アル・メザン人権センター」のイサム・ユニス氏は米CNNテレビに「自宅近くに爆弾が落ちた。住民は恐怖でパニック状態に陥っている。飲み水にも事欠いている」と語った。
ガザには約150万人が暮らす。空爆開始後、イスラエル軍は人道・医療物資のガザ地区への搬入を認めたが、状況は悪化の一途。4日前から全面停電で、病院では燃料備蓄が2日分しか残っていないという。
イスラエル軍は地上侵攻・砲撃に先立ちガザ住民に自宅から避難するよう呼びかけるチラシを投下した。だが人道団体のガザ在住メンバーによると、ガザには避難所やシェルターはなく、多くの住民は自宅にとどまっているという。
07年6月にハマスが武力制圧したガザの行政機能不全が、住民の混乱と不安に拍車をかける。ニューヨーク・タイムズ紙タグリード・エルホダリ記者(ガザ在住)はCNNで「住民を守る政府・当局が不在状態だ。住民は見捨てられている」と窮状を伝えた。
毎日新聞 2009年1月4日 20時44分(最終更新 1月4日 23時09分)