部活と学業:「今は“スポーツマシン”を作っているだけ」
バスケ界の重鎮「原点に戻れ」
全国大会ベスト4制で勉強放棄
スポーツだけでは優秀な学生そっぽ
韓国男子バスケ界の重鎮、金永基(キム・ヨンギ)韓国バスケットボール連盟(KBL)元総裁は、息子(大邱オリオンズのキム・サンシク監督)に対し、自身の大学時代のように勉強と両立させてほしいと考えていたが、あきらめたいきさつを語ってくれた。
「自宅がソウル市内にあるのに、“どうして1年のほとんどを合宿所で過ごさなければならないんだろう”と思い、息子を家から通わせました。すると、“シカト”されたんです。顔に真っ青なあざを作って帰ってきたこともあります。息子をいじめの対象にしてはいけないと思い、わたしの方があきらめました。わたしがバスケをしていたときの環境とは180度変わっていました」
金元総裁は1950年代後半から60年代初めにかけて韓国男子バスケ界の看板スターだった。ソウル培材高校を卒業した金元総裁は一般入試で高麗大学法学部に進学した。引退後は韓国中小企業銀行支店長、信用保証基金専務取締役、シンボ創業投資社長などを経て、大韓体育会副会長・大韓オリンピック委員会副委員長・KBL総裁などを歴任、金融とスポーツ行政の分野で活躍した。
「わたしが通った培材高校には当時36の部活があり、そのうち10は運動部でした。在校生は義務的にどれか一つの部に入らなければなりませんでした。今振り返ってみると、あのころの教育制度は今よりもよかったと思います。わたしがバスケをすることになった当時は、優等生でなければバスケ部に入れてくれませんでした」
部活はすべて、放課後に行われた。授業を抜けて部活をするということ自体、当時は想像もつかないことだった。バスケ部の練習も大会前に集中的にするだけ。大会がないときは「面白半分で」自主的に集まり練習していた。
「大学入学の最終面接で、後に高麗大学総長を務められた玄勝鍾(ヒョン・スンジョン)教授に突然、“カンニングしただろ?”と言われました。後で分かったのですが、英語の試験がほぼ満点だったそうです。“カンニングしていません”と答えても、信じてくれませんでした。だからほかの受験生たちが面接している間、わたしは部屋の片隅でまた試験を受けていました」
金元総裁は、大学時代も一般の学生と同様に勉強し、試験を受けたという。しかし、クラブ活動が忙しかったため出席日数が足りず、ほかの学生より半年遅く卒業した。ところが同期生たちは単位が足りず卒業できなかった。当時、同大学は米ハーバード大やエール大のように、クラブ活動をしていても例外なしに勉強させたそうだ。
「わたしたちのころは“大学応試資格試験”というのがありました。だからみんな勉強しなければならなかったんでしょう。でも、その試験がなくなり、運動部の学生は徐々に勉強しなくなりました。全国大会ベスト4制度ができて、学校の運動部は勉強に見切りを付けるようになったので…」
金元総裁は、現在の韓国の学校スポーツを「悪い制度が作った排他的なシステム」と言い切った。勉強を度外視し、スポーツにだけ打ち込むことで、優秀な資質を持ち、賢く独創性がある学生はスポーツから遠ざかるようになったというのだ。
「ストリート・バスケをする学生を見たら、背も高いし、驚くほどバスケがうまい。だから“バスケ部に入らない?”と誘ったところ、断られたんです。後で聞いてみると、その学生は優等生だそうでした。“勉強させてくれないので、バスケなんてできない”ということでしょう」
金元総裁は「スポーツも本当に最後の勝負は独創性で決まります。今のスポーツが置かれている環境では、独創性を培うことができなくなっています。最近のバスケ部員を見ると、専門技術者ではなく、単なる技能工としてバスケ人生を終わらせるのではないか、という気がします」と無念さをにじませた。運動部の学生を体育関連学科にだけ入学させる制度も、学生の交友関係を狭める一因と指摘する。
金元総裁は「悪いことは、一度始めてしまうと直すのも苦労します。何か新しいことを作っていこうというのではありません。学生が勉強もスポーツも一生懸命やるのは教育の原点。まさに、その原点に戻るべきです」と強調した。
カン・ホチョル記者
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