信号機を制御して救急車の走行時間を短くする「現場急行支援システム」を福岡県で唯一導入している飯塚地区消防組合(飯塚市)は、2008年の実績調査で平均1分32秒の短縮効果を確認した。救急車の遅れは同年の消防白書も「深刻な問題」と指摘している。有効性を示した今回の調査結果は、システム拡大への流れを加速させそうだ。
■事故防止、患者負担軽減も
システムは、道路上の感知器に発信機を載せた救急車が接近すると、進行方向の赤信号は短縮、青信号は延長する仕組み。九州では同市と熊本市で導入している。
飯塚市では昨年6月、沿道に消防署や救命救急センターがある国道201号の伊川‐仁保団地間(8.1キロ)で導入した。発信機は救急車3台に装着。31カ所の交差点で優先走行できる環境が整備されている。
消防組合がこの3台について昨年6‐11月の走行時間を調べたところ、通報から現場到着までの時間は前年同期比で36秒短縮、現場から病院収容までは同56秒短くなった。1回の出動平均の走行時間としては同1分32秒縮まったという。
飯塚消防署の松岡修司救急隊長は、ほかにも、交差点で出合い頭の事故防止▽ブレーキ回数減少で車両の揺れも減り、患者の負担が軽減した‐などの効果を実感しているとし、年間約7100件の救急車を受け入れる飯塚病院救命救急センターの鮎川勝彦所長は「1分でも早く搬送されると救命率が上がる。このシステムをぜひ広げてほしい」と話している。
システムを設置・管理する警察庁交通企画課は「ほかでも時間短縮や安全確保などの効果が確認されている。関係機関と連携しながら、これからもシステムの整備に努めたい」としている。
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●ワードBOX=現場急行支援システム
発信機を取り付けた救急車やパトカーが緊急走行すると、道路上に設置した受信機が感知。その信号が交通管制センターに伝わり、車両の進行方向の赤信号を短縮したり、青信号を延長したりする。13都道府県で運用中で、警察が設置・管理している。福岡県飯塚市内では救急車3台、消防車4台、パトカー9台が発信機を搭載している。
=2009/01/04付 西日本新聞朝刊=