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2009年1月4日

◎総選挙の年に 国会議員の定数減を公約に

 総選挙の年が明けた。日本の政治の歴史的な選択の年である。小選挙区比例代表並立制 という選挙制度改革でようやく形をなした二大政党の間で、戦後初の本格的な政権交代が実現するかもしれない。自民、民主のいずれの党が勝利するにせよ、戦後政治の転換点を迎えて望みたいことの一つは、国会議員の定数削減である。

 「政権交代可能な二大政党制の実現」というのが、ここ十年以上にわたって続く政治改 革の眼目である。今度の衆院選で一応の答えが出されることになるが、政治改革、国会改革はなお途上にあり、その核心として国会議員の削減は避けて通れまい。政治決戦に向けてこれから固める各党の政権公約(マニフェスト)にぜひ定数削減を盛り込んでもらいたい。

 国会議員の数を減らそうという声は自民、民主両党から出されている。自民党国家戦略 本部の国家ビジョン策定委員会は昨年、国会議員を衆参両院で計二百五十人に削減する改革案をまとめている。現在四百八十人の衆院議員を小選挙区だけの二百人に、二百四十二人の参院議員を全国区のみの五十人にするという内容である。

 削減数に限ると自民党案は一見、相当思い切った改革案のように見える。しかし、同案 は将来の道州制導入を前提としている点で評価に値しない。いま叫ばれている道州制論は一種の「幻想」に近く、実現は望むべくもないからである。実現不可能なことを条件にした削減案は、実際には実行しないと言っているに等しく、自民党のやる気を疑わざるを得ない。

 一方、民主党は大勝した一昨年の参院選マニフェストで、国会議員定数の一割以上の削 減を掲げ、具体的には小選挙区制重視の立場から、衆院の比例代表定数を百八十から百に減らすと明記した。この点は評価できるが、鳩山由紀夫幹事長は昨年、衆参両院とも二割ほど削減すべきとの考えを示しており、衆院選でさらに踏み込んだ改革案の提示を求めたい。

 二大政党制の米国は下院が四百三十五人、上院は州の人口にかかわらず各州二人に限定 され、計百人に過ぎない。それでいて、議員の数が足りないという話を聞いたことがないのである。二大政党制の本家と言われる英国は下院六百四十六人、上院は定数がなく七百人を超えているが、英上院(貴族院)は、任期が終身の世襲貴族議員や宗教貴族議員らで占められる歴史的特殊性があり、実際に登院して活動している議員は全体の半分程度である。

 人口も国土も比較にならない大国・米国の例を見れば、日本の国会議員が七百人以上も いる必要はない。実際、顔も覚えられないほどの議員の中で、本当に政治を動かし、国民生活に役立っていると言える議員はどれほどいるだろうか。北陸選出の議員の顔ぶれを思い浮かべてみても、議員定数をたとえ三分の一に減らしても国政に何ら支障がないのではないかと思えてくる。

 二大政党制は、イデオロギーで極端な違いがなく、基本政策でも深い断絶のない政党が 善政を競い合うものである。極論のない穏健な政党政治実現のため、ドイツのように、比例代表で全体の5%以上の得票がなければ政党の議席を認めず、度の過ぎた小党分立を避ける工夫をしている国があることにも留意しておきたい。

 与野党内の国会議員削減論は、行財政改革とセットで語られることが多い。平成の大合 併で市町村の数は約三千二百から千七百余に再編され、地方議員は大幅に減った。今後、消費税の引き上げを含め国民に痛みを強いる財政改革や国の出先機関の統廃合、公務員の総人件費削減などを本格的に進める必要があり、そのためには国会議員も血を流さなければならない、というのである。

 行財政改革を推進するため、国会議員みずから範を示そうという姿勢はよいが、国会議 員の定数削減は行財政改革のためだけではない。地方に権限、財源を移譲し、国の仕事を内政、外交の基本的なものに絞る地方分権改革を徹底すれば、国会議員はまだまだ少なくてすむだろう。国会議員の削減は「国のかたち」を変える分権改革と不離のものと考えたい。


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