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裁判員法成立時、主要会派はすべて導入に賛成していた国会。しかし、市民の声を受けて足並みは乱れている。
「制度そのものには反対しないが、国民の理解は深まっておらず、不安も解消されていない」。社民党と国民新党は昨年末、問題点が解決されなければ実施を延期するよう求めていくことで合意した。民主党や、共産党にも同調を働きかけている。
当初は、昨年12月の臨時国会中に衆院法務委員会で裁判員制度に関する集中審議が開かれるはずだった。ところが、自民党が「国民も制度の意義を理解し、進んで参加していただけるよう呼びかける」とする全会一致の決議を委員会で実現しようともくろんだことで、社民党が「翼賛的な推進決議には賛成できない」と反発。この混乱で集中審議の開催は幻と消えた。
与党内も一枚岩ではない。公明党の浜四津敏子・代表代行は同月の講演で「裁判員制度そのものの見直しという話になってくるのではないか」と発言して波紋が広がった。
制度そのものに反対してきた人たちの動きも活発だ。弁護士や学者らが呼びかけてできた「裁判員制度はいらない!大運動」は「制度自体に違憲の疑いがある」と主張する。
最高裁や法務省は「国民の良識を反映させることで司法への信頼がより高まる」と制度の意義を広報している。一方、日本弁護士連合会は「誤って無実の市民を罰することがないよう、市民が自らの自由や権利を守ろう」と導入の必要性を訴えている。
裁判員法には、施行から3年で政府が必要に応じて見直す、という規定がある。「100%完璧(かんぺき)なスタートは難しい。国民がそもそも何を求めるのかによって、見直しも当然にあり得るだろう」と最高裁の幹部は話す。(岩田清隆、延与光貞、中井大助)