この会場に来ると温かい雰囲気を感じるのは毎年のことなのだが、加えてひとわたり場内を歩くうち、年ごとに違う言葉が一つ浮かんでくる。岡山市の天満屋岡山店で始まった院展岡山会場。
今年は会場を巡るまでもなく「光」の一文字が浮かび、ひそかに自分だけのテーマにさせてもらった。平山郁夫さんの「祈りの行進・聖地ルルド・フランス」では聖地に向かう人々一人一人が持つともしびの暖かな黄色が心に染みる。
大矢紀さん「浄」は山肌を彩る黄金色の光が見る者の心を射る。本紙解説には作者の祈りを表しているとあった。松本哲男さんが「文明アジア『仏跡』」で描くハスの花のピンクの輝きは実物でしか味わえまい。
「光」の一文字を感じたのは、厳しさを増す社会に光を見いだしたいという思いの反映だったかもしれない。西田俊英さん「晨・鶴」の鶴たちは左手画面外の希望の地へ歩んでいるように見えた。
入り口正面で迎えてくれる下田義寛さんの「風駆ける」は、二頭の白馬が紅に染まった空をいく。本紙元日の特集に「福を招く画なのか」とあったが、まさしくそう思えた。
作品の間を巡る人たちが徐々に満ち足りた表情になっていくのを眺めていると、こちらもうれしくなる。今年が人々にとって、より幸多い一年であれと願う。