【ベルリン=黒沢潤】ロシアがウクライナ向けのガス供給を停止したことを受けて、同国経由でロシア産ガスを輸入している欧州連合(EU)の加盟国内では懸念が強まっている。ルーマニアなど東欧3カ国では3日までに、6〜40%の供給低下が確認されており、EU議長国のチェコはロシアとウクライナ双方に、事態の早期解決を求める緊急声明を発表した。EU各国は近く、高官級会合を開いて対応を協議する方針だ。
ロイター通信によれば、国内ガスの約3分の1をロシア産に依存するルーマニアでは2日、供給量が30〜40%低下したことが確認された。今後、数日間にわたり、約30億立方メートルの備蓄分を切り崩して対応するが、国内の気温は今週末、零下15度まで下がることが予想されることから、国民の間では不安が広がっている。
ハンガリーでは、約25%の供給低下が確認された。ただ「危機的なレベルにまでは達していない」(ガス関連会社幹部)とも伝えられている。ポーランドでも6%の供給減が確認された。不足分は、ベラルーシ経由のガスでまかなっている。ロシア側はウクライナが契約に反して、ガスを抜き取っていると非難した。
EU議長国のチェコは今回の事態発生当初、「ロシアとウクライナの2国間問題」との立場を崩さなかった。しかし、ガスの約3割をロシア産に依存し、その8割をウクライナ経由で輸入するEU域内に影響が出始めていることもあり、チェコ政府は2日、態度を大きく転換させた。
同国政府スポークスマンは緊急声明で、「EUと(ロシアなど)隣国の関係は、信頼感によって築かれなければならない。(欧州への)ガス供給という約束は、いかなる状況であれ尊重されるべきだ」と、事態の早期解決を強く求めた。また、「(今回の対立は)特別会合を開催しなければならないほどの事態にまでエスカレートしている」とも強調し、ブリュッセルで5日、EU高官級会合を開く方針も示した。
ロシアは昨夏のグルジア紛争で、一貫して強硬姿勢を崩さなかった。また、2006年初頭に続く今回のガス供給停止問題もあって、欧州のロシアに対する不信感は増幅している。ドイツやブルガリアなどEUの数カ国は、今回の事態を楽観視しているが、厳冬に見舞われる今年、供給の停止期間が長引けば、対露批判が強まりそうだ。
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