ミニチュア鳥居のまわりの草を刈る。「草に埋もれたら目立たないので」=秋田県にかほ市平沢、矢島写す
神社のシンボルである鳥居のミニチュアが最近、各地の空き地や河川沿いに設置されている。全国の自治体や民間で、ごみの不法投棄を防ぐために広がっているという。神様のいる場所にごみは捨てられないだろう――そんな日本人の意識を見込んだ試みだが、効果のほどは。
■「ごみが見当たらなくなった」
秋田県にかほ市平沢の裏山を登る市道沿いに、朱色の鳥居が立っている。高さは約90センチで、「山神」と書かれた立て札が張りつけてある。人気はなく、背後にササやススキが生い茂る。
「鳥居を置いたら、ごみが見当たらなくなった」。案内してくれた地元の高階峯生さん(64)と斎藤高さん(73)は口をそろえた。
2人は、市から委嘱された「廃棄物不法投棄監視員」。月3回、市内を巡回している。一帯にはそれまで、テレビや冷蔵庫、洗濯機、古タイヤ、空き缶、玩具などが捨てられ、一巡すると軽トラックの荷台が山積みになった。
「救世主」を見つけたのは、高階さんが今春、福島県に桜見物に出かけたときだ。「あれは何だ?」。道路沿いにひざ丈の高さの鳥居が立っているのを見て、ごみ対策に活用していることを知った。
日曜大工が趣味の高階さんは帰宅後、さっそく鳥居を製作。地元の人たちが「山の神様」とあがめる大きな岩のある場所にお参りし、6月、市内5カ所に置いた。「山を汚すやつは神様が見ているぞ、という意味を込めた」
鳥居を設置して6カ月、今のところごみの不法投棄はない。逆に、勘違いしたお年寄りがかしわ手を打つこともあるという。
市の担当者は「鳥居は5基で3千円以下で済むのに効果が大きい」と、鳥居の設置場所を増やす方針でいる。
■効果はどのくらい?
「鳥居」の効果は持続するのだろうか。