幕末に、筋を通して一本道を歩んだ女性がいた。その人の名は篤姫。後の天璋院。
かつて、大河ドラマ「篤姫」の原作となる宮尾登美子さんの歴史小説『天璋院篤姫』を読ませていただき、篤姫の人生を知ったときの感動はとても深いものでした。そして今回、この小説に女性の生き方を描けば抜群の脚本家・田渕久美子さんと大河ドラマという舞台で組めることは、無上の喜びです。
幕末というと、男性の英雄ばかりがクローズアップされ、女性の活躍が無視されがちです。男たちがめぐらした策謀によって、毎日誰かの命が狙われていたかのような印象すらあります。しかし、幕末と呼ばれるその時代にも子どもは生まれ、愛し合う夫婦は存在し、人々は口を開けて笑い、日々の営みを続けていたはずです。
今回の「篤姫」では、そういうホームドラマ的な日常生活の側面をきっちり押さえたうえで、時代の変革点である幕末を描ければ、と思っています。
一生をかけて家庭、家族(江戸城の御台所になってからは大奥1200人が篤姫の家族)を守り抜く篤姫を演じるのは、史上最年少での大河ドラマの主役となる宮崎あおいさん。篤姫の亡くなる49歳までを演じてもらいますが、宮崎さんの表現力を信頼しきっているのでなんの心配もしていません。また、篤姫を取り巻く多彩な登場人物たちを演じる方々は、どなたも魅力的な俳優さんばかりです。原作、脚本の魅力を最大限に引きだしていただけるキャスト陣に恵まれたと自負しております。1年間の長いおつきあいとなりますが、お楽しみいただければ幸いです。