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政治

憲法集会


憲法9条、25条問題に帰結する心の病と貧困〜生きたい!平和に 2008年11・3憲法集会

ひらのゆきこ2008/11/11
11月3日、星陵会館ホール(東京永田町)で、「生きたい!平和に 2008年11・3憲法集会」が開催されました。参加者は350人。お話は、香山リカさん、湯浅誠さん、谷山博史さん、金英丸さんの4人でした。社会の心の病も貧困の問題も、憲法9条と25条の問題に帰結しており、憲法を守るだけではなく、憲法を実現することが、いまほど強く求められている時代はないことを、改めて強く感じました。
日本 憲法 NA_テーマ2

憲法9条、25条問題に帰結する心の病と貧困〜生きたい!平和に 2008年11・3憲法集会 | <center>集会の様子</center>
集会の様子
 11月3日(月)午後1時30分より星陵会館ホール(東京永田町)で、「生きたい!平和に 2008年11・3憲法集会」が開催されました。参加者350人。

 お話は、香山リカさん(精神科医)、湯浅誠さん(NPO法人自立生活支援センター・もやい事務局長)、谷山博史さん(日本国際ボランティアセンター代表理事)、金英丸さん(韓国平和憲法市民連絡会/平和博物館活動家)。主催は11・3憲法集会実行委員会ほか12の市民団体。

●香山リカさんのお話

 精神科医の香山さんは、精神科医がなぜ憲法の話をするのかとよく聞かれるそうです。香山さんは、憲法を変えようとする動き自体、社会の心の病気の問題があると述べ、諸問題を抱え、だれもがどうにかしたいと思っているいまの日本社会が、憲法を変えればよくなるという発想があるのではないか、と語りました。

 改憲論の世論が高まってきたのは、1980年代後半から1990年代に入ってからです。その時代はどんな時代であったかというと、バブルが崩壊して不況が本格化するなか、1995年には阪神淡路大地震があり、オウム真理教の地下鉄サリン事件が起こりました。90年代半ば以降、これまで信じてきた安心安全が脅かされ、経済大国の自信も喪失し、拠り所としてきた価値観の崩壊によって、改憲の声が高まってきたことを指摘しました。

 香山さんは、不安や恐怖が押し寄せてきたとき、不安を不安として受け止め、乗り越える人は強い人であり、ふつうの人は否定し、見なかったふりをすると述べ、不安から逃れるために何か別の要素を見つける、と語りました。カルロス・ゴーン氏がきて、これまでの日本を丸ごと否定し、終身雇用や年功序列は世界で通用しないと言うと、経営者は自信をなくす。一般市民も災害やテロなどの不安に直面し、政治家も同じだと語りました。

 経済や生活の安定が揺らぎ、現実を受け止めることができないとき、見つけたのが愛国心だった、と述べ、日本文化の歴史や神話を持ち出して愛国心をあおり、改憲に手をつけ、行き詰まってきた日本を一新するために憲法を変える。

 しかし、改憲を目指した安倍元首相がいまや自ら唱えた再チャレンジを余儀なくされているように、憲法を変えても生活が良くなるわけではなく、改憲論は国内の行き詰まりから目をそらすための打ち上げ花火のようなものであったと語りました。

 改憲から続く小泉改革は、日本の病から一時的に目をそらす目くらましだったのではないか、と述べ、小泉改革はまったくの幻想であり、錯覚だった、との認識を示しました。

 香山さんは、憲法を守ろうとする人にとって、「今がチャンス」と述べ、多くの国民は自分たちが騙されたことに気づき始めており、だれも好き好んで病気になる人はいないのに、自己責任の名のもとに高齢者や障害者など社会的弱者が切り捨てられる冷たい社会に対し、「こんな世の中はおかしい」と声を上げていると語りました。

 人々は威勢のいい改憲論で世の中がよくならないことに気づいており、憲法を大切にという人が増えている、と述べ、「今がチャンス」であることを強調しました。

 改憲論は不安を打ち消すために出てきたことに言及しながら、不安はだれにでもあり、「大敵」であるが、90年代以降の不安の特徴は目に見えないことだと指摘しました。治安や災害の不安、食や住まいの不安…店。事故米、マンションの耐震偽装、金融不安などは個人の力では防御できないものばかりであり、心の健康に悪い状態であると語りました。

 不安に蝕まれると正しい判断ができなくなり、頑なになって人の意見に耳をかさず、誤った主張をすると香山さんは述べ、私たちがそうならないために、自分の心を落ち着かせ、人の意見を聞き、すり合わせる柔軟さや、心の柔らかさと弾力を私たち一人ひとりが持つことが大事であり、そのために休養し、楽しく暮らすことを心がけることが必要だと語りました。

●湯浅誠さんのお話

 貧困の問題は、憲法9条と25条(生存権)の問題だと、湯浅さんは語りました。湯浅さんが1995年、渋谷で野宿の人たちと一緒に活動を始めたとき、野宿の人たちに自衛隊経験者が多かったそうです。なぜ自衛隊に入ったのか。貧しかったから。食えなかったから。最近、その自衛隊に行きたいという若い人がいると語りました。

 反貧困の集まりに自衛隊の人がきて、リクルート活動をしていたそうです。もやいにもきて話をしたそうですが、入隊期間中に資格がとれるとか、中卒の人の年収が300万円(入隊期間2年)、入隊期間が3年の人は年収400万円と、年収がとても良いそうです。

 中卒で職を転々とし、我々のところにたどり着いた人が年収300万円のところに入れるかといえば、あり得ない話だと湯浅さんは述べ、相対的に自衛隊の魅力が上がっていると語りました。自衛官を募集するために反貧困の集会にきて声かけをしたり、電車の中刷り広告を出したり、貧困の広がりに見合った広がりがあることを指摘しながら、食っていけない人たちや、「カリフラワーちゃん」などと呼んで若い女性の自衛官を募集していると語りました。

 もやいには1ヶ月100件ぐらいのSOSがあるそうです。半数が20代、30代の若い人たちですが、家族の相談も増えており、年金世代になった親が、40代になった子どもをいつまでも抱えていられないので、働いてもらいたい、という相談がくるそうですが、これまでは家族という私的なセーフティネットが支えていたために社会的に見えなかった貧困が、徐々に見えるようになったと語りました。

 労働状況、企業、政府のセーフティネットがなくなり、働いても食べていけない人が増えたと述べ、失業保険をもらっているのは失業している人の10人に2人、北九州市で3年連続して餓死事件が起きていることがニュースになったが、生活保護からもれる人が大量にいることを指摘しました。

 セーフティネットの穴が広がり、貧困の広がりとともに自衛隊が相対的に魅力となっている現実があることに言及しながら、同時に広がるのは日雇い派遣やゼロゼロ物件などの貧困ビジネスだと語りました。

 敷金礼金ゼロのゼロゼロ物件は1日でも家賃が遅れると高額の違約金を取られ、鍵を変えられる。被害者が訴訟を起こしたことがニュースとなりましたが、サラ金や闇金と同じように、これもセーフティネットの穴にはまった貧困ビジネスだと語りました。

 自衛隊のリクルートは国家ビジネスであり、貧困ビジネスが私的公的レベルで広がっていることを指摘しながら、貧困の問題は9条と25条につながっている、と述べ、貧困からみると9条と25条が見えてくる、と語りました。

 椅子取りゲームでは必ず椅子に座れない人がいます。日本はこれまで座れなかった人に注目してきたが、最近は椅子の数に注目するようになり、穴が大きくなったから落ちる人がいるのは仕方がないという認識に変わってきたと語りました。その認識をさらに強める必要があることを強調しました。

 最近、高齢者の犯罪が増えており、その52%が万引きだと述べ、再入所の7割の人は塀の外では食えない現実があることを指摘しました。事件だけを見ていると事件の元を断てないと述べ、犯罪がなぜ起こるのか、穴が広がって落ちる人が増え、落ちた人たちに対するセーフティネットがないことが問題であることを指摘しました。

 かつて提灯社会だと言われていた日本は、いまは縦長の楕円形だと述べ、昔も貧困はあったが風船を横からつぶす感じで貧困が増え、まん中が細って、年収400万〜800万円の層が減っていると語りました。高額所得者が150万人いて、それと相当数の生活保護世帯があり、ひょうたん型のアメリカのように上下の格差が大きいことを指摘しました。

 社会の形を見ないと貧困の問題の解決策は見えてこない、と述べ、この形をどうするかが問われていると語りました。下に落ちた人がまた労働市場に戻ってくると、貧困ビジネスの餌食となり、日当5,000円で働く人があふれる。企業は安い方を使うので、貧困の放置は社会が壊れて労働市場を壊す原因になることに警鐘を鳴らしました。

 湯浅さんは、「自分たちの社会をどうしたいのか。悪者を作って自己責任を作るのはやめましょう。形の問題を問う中で解決への道を探っていきたい。家に帰ったら、お前の頭の中は日本社会をどうしたいと思っているのか、家族に問い正してほしい」と述べ、一人ひとりが社会のあり方を自らに問うことの必要性を強く訴えました。

●谷山博史さんのお話

 アフガンに4年間駐在したという谷山さんは、香山さんや湯浅さんの話はアフガンの紛争の現象と同じ話だと述べ、紛争をする人たちの心の中に社会の病があると語りました。

 自衛隊のリクルートの話は貧しい人が自衛隊に入るが、武装勢力が大きくなっている原因も貧困であり、タリバンがたくみにリクルート活動をしている現実があることに言及しながら、日本、アメリカ、アフガンの貧しい若者が戦場で相見える(あいまみえる)構造が浮かび上がってくることを指摘しました。

 谷山さんは、自民党の新テロ措置法はアフガンのための支援ではなく別の意図がある、と述べ、自民党はアフガンではなくアメリカを見ている、と批判しました。民主党もアフガンの復興支援は国連決議をみて判断すると言っているが、どこを見て支援をすると言っているのか、国連の決議があろうとなかろうと、不当なものは不当なのだ、と厳しく批判しました。

 その一方で、日本にいると日本をちょっと見直す点もあると語りました。アフガンの軍閥の武装解除を主導したのは日本であり、評価されていること。復興支援活動に日本は自衛隊を派遣しておらず、NATOとは違う、非武装で自衛隊を派遣せずにアフガンを支援してくれた、たとえインド洋で給油活動をしていても、それが私たちの支えになっている、と谷山さんは強調しました。

 独自の地位をどう活用するのか。アフガンは期待している、と述べ、日本のNGOは自衛隊派遣だけはアフガンの人の立場を敏感に代弁しようとしており、NGOが連携してアフガンに自衛隊の派遣はならんと政治家を説得していることを明らかにしました。インド洋の給油活動をやめ、憲法に則って、紛争の解決に力を行使しない、人々の信義に基づいて尊厳を尊重し、非武装で支える。そこに拠って立つしかない、と述べ、憲法を体現していることを強調しました。

 憲法の原理や理念が、紛争地の人々を支える大きな支えになっていることを強調しながら、アフガンの厳しい現実に言及し、NGOが活動できるスペースが年々狭くなっており、命の危険を感じることを明らかにしました。

 ここにきて国連がアフガンの厳しい現実を認識し、3つのシナリオを作ったことは評価するが、なんら打つべき手段を打たず、現実を直視しないで失敗しながら突き進んできたことを厳しく批判しました。谷山さんは、3年前からテロ戦争は展望がないと警告し続けてきたと述べ、ペシャワール会の事件があって気がついたのではないか、と語りました。

 アフガン対テロ戦争は成功したと言われてきたが、現実を見ていないことが間違いを繰り返す原因になっていたと述べ、外国軍は1万5000人から7万人に増強されたが、武装勢力の力は強まっていると語りました。それはなぜか。紛争で亡くなる人が増え、アメリカをはじめとした外国軍の空爆で民間人が多数亡くなっており、犠牲者の遺族がタリバンに参加し、自爆をするといった状況が生まれているからです。

 谷山さんは、対テロ戦争がアフガンの人たちに憎しみと怒りと絶望と、武力でしか対抗できない一般の人を増やしてしまったことを深刻に考えている、と苦しい胸の内を吐露しました。

 アフガンの人たちにとって外国軍は自分たちを攻撃する人だという認識が強まっており、自爆は自衛のための手段として容認されていると述べ、自分たちは占領されていると思っていると語りました。アフガン全土の50%がタリバンの心理的支配にあり、日々接している誤爆事件と結び付けても深刻な状況になっていることに警鐘を鳴らしました。

 谷山さんは、「対テロ戦争は解決しない。外国軍は対テロ戦争に連動しない」と述べ、国連の決議によって治安のためにアフガンに派遣されたISAFがいつの間にかOEF(米軍作戦名「不朽の自由作戦」)と合体したことに言及し、国連に対する疑問をもっていることを明らかにしました。

 外国軍が人道復興支援をすることによって、人道復興支援が軍隊の道具として使われる状況をつくったことを厳しく批判しながら、私たちの活動も米軍の手先じゃないかと思われていると述べ、アフガンで活動しているNGOが国連に何度も声明を出したことを明らかにしました。

 アフガンでは450万人が食糧支援を必要としており、100万人の子どもが深刻な栄養失調にあるが、支援を必要としている人たちにアクセスできない状況にあると述べ、国連に対し、独自の国連人道支援連絡事務所を作ってほしいと声を大にして訴えていることを明らかにしました。

 状況は悪いが展望はあると述べ、日本はアフガンでまだ独自の地位をもっており、アフガンに対する支援は泥沼のアフガンに自衛隊を派遣するのではなく、対話のための仲介をしてほしい、と強く訴えました。最後に、「アフガンの問題はアフガンだけの問題ではない。憲法を守るための実践の場として支援をしてほしい」と訴えました。

●金英丸さんのお話

 日本と韓国の平和の架け橋になりたいと語る平和活動の金さんは、現在の韓国について、「大変。日本の小泉政権時代と似ている。大統領の任期は5年。いまの李明博政権はあと4年も残っている。拷問以外、軍事独裁時代と同じことを全部やっている。いつ始まるかわからない危機感を感じている」と語りました。

 日本に留学していた金さんが韓国に帰国して驚いたのは、人々の価値観が変わり、「お金のことばかり」になっていたそうです。「彼が大統領になったらよくなるのではないか」との期待から李明博大統領が誕生したが、「騙された」と語りました。

 (李政権は)規制緩和や教育に競争を持ち込み、教員組合を弾圧し、公共放送のKBSの社長を追い出した、と述べ、ある女子高生がネットで呼びかけて始まった5月のデモも、受験で大変なのに、アメリカ牛肉が輸入されたら給食や軍隊で食べさせられることへの抗議だったと語りました。

 キャンドルデモには、子どもを育てているお母さんが乳母車を押して参加したり、ネットで生きる権利を主張している人たちなど、いろんな立場の人たちが参加し、100日間続いたそうです。デモを鎮圧するために放水車が出て、女子学生が警察の装甲車で頭を踏まれるという事件もあったことを明らかにしました。

 6月11日に100万人のデモが出て、大統領は2回謝ったが、10%まで落ち込んだ支持率が今は30%になったので、3倍に上がったと喜んでいると語りました。デモには屋台が出てミュージシャンや演劇者もきたと述べ、お祭りになっており、新しい文化を韓国が築いたと語りました。

 逮捕者が出たり、1,180日間寺に立てこもるといった攻防のなかで、民衆のための国民監査がつくられ、毎週、キャンドルデモが行われているといった状況も生まれていると語りました。軍事独裁主義に反対し、問題のある企業の不買運動や、放送局の記者らが社長交代を阻止するための行動を起こしていることにも言及しました。

 韓国では徴兵制があり、国防長官が不穏書籍として軍隊に入れることを禁じた30冊の書籍を、「不穏書籍コーナー」を設けて売り出す本屋もあり、売り上げを伸ばすといった、楽しい形での権力への抵抗が続いていると述べ、いまの段階は、左よりの教科書が排除され、教員組合に対する弾圧があると語りました。

 韓国でも日本のつくる会のようなところができて、近現代史について、日本の植民地支配は朝鮮を近代化するためだったと、ソウル大学教授などが中心となって主張していると述べ、131の法案(キャンドルデモ反対など)が出ていて法律を変えるなど、「これからが正念場」との認識を示しました。

 歴史の逆行に対し、どうやって闘うか。金さんは、日本の憲法はアジアの不戦の闘いであると述べ、日本で生まれた自分のお母さんのことにも触れながら、オーストラリアの首相がアボリジニの人たちに謝罪したように、本当の意味での謝罪をし、未来に向け、日中韓が過去の清算と徹底した歴史認識について共通の理解を深めることの必要性を訴えました。

●筆者の感想

 お話のあと、金さんが日本語と韓国語で「イムジン河」を歌うと、会場の人たちも一緒に歌い、終わると割れるような拍手が起こりました。金さんのお話は大変ユーモアに富んだお話で、会場から笑いが起こりましたが、日本と同じように韓国も大変厳しい状況にあることがわかりました。

 また、香山さんや湯浅さんや谷山さんのお話も、今の日本の状況をそれぞれの活動の場から伝えてくれ、考えさせられるものがありました。とくに、日本とアメリカとアフガンの貧しい若者が戦場で相見える構図が浮かび上がってくるという谷山さんのお話は、大変深刻な内容を含んでおり、深く考えさせられました。

 香山さんや湯浅さんが指摘しているように、社会の心の病も貧困の問題も、憲法9条と25条の問題に帰結しており、憲法を守るだけではなく、憲法を実現することが、いまほど強く求められている時代はないことを、改めて強く感じました。
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