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【社会】

上高地の謎に迫る 信州大研究所がボーリング調査

2009年1月3日 朝刊

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 北アルプス・上高地の成り立ちを解明しようと、信州大山岳科学総合研究所(長野県松本市)は大正池近くでボーリング調査を始めた。上高地の平らな地形は湖の痕跡とされ、それを裏付けるとともに、堆積(たいせき)層の花粉を分析して過去の気候変動を探り地球温暖化対策にも役立てる。

 学術研究を目的に上高地で大規模なボーリング調査が行われるのは初めて。高山の環境変化の解明も日本初という。調査は2月末までかかる見通しだ。

 上高地(標高約1500メートル)では、2万6000年前の焼岳火山群の噴火で岐阜県側に流れていた梓川がせき止められ、大きな湖を造ったと考えられている。その後、湖が決壊し、松本側に流れたのが現在の梓川とされる。しかし、湖の大きさ、いつごろまであったのかは分かっていない。

 同研究所はこれまでの地質調査から、せき止め湖は河童橋を挟んで上流は徳沢園、下流は中ノ湯温泉付近まで広がっていたと推定。地下200−250メートル付近に湖の堆積層が残っているとみている。

 ボーリングは直径約6センチの穴を300メートルまで掘る。昨年11月から開始し、約50メートル掘り進んだ。現在の大正池は、1915(大正4)年の焼岳噴火で梓川がせき止められて生まれた。

 堆積物には植物の花粉が含まれ、それを分析すると当時の気候が割り出せる。高山地域は、寒暖によって高木が生える標高の限界(森林限界)が上下するなど影響が直接表れるため、過去の気候の変化を知る手掛かりになる。

 調査は、松本市などと連携する5年間のプロジェクトの一環。事業費は約2500万円で、動植物調査も含めると計約2億3000万円。

 原山智教授は「上高地の謎を解き明かしたい。氷河時代からの温暖化プロセスも解明できる」と話している。

 

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