まだ続く“派遣切り” 懸念される失職者の増加「2009年問題」


 
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労働者の雇用形態別年収の構成比(総務省2007年就業構造基本調査に基づき作成) |
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06年から本格化した製造業派遣、契約期間切れが今年到来。
2008年は派遣労働者や業界に関する問題、話題が相次いだ1年だった。
まず、1月に違法派遣や二重派遣をしていたとして、日雇い派遣最大手の「グッドウィル」(廃業)が事業停止処分を受けた。
続いて現代のワーキングプアや格差問題と重なる格好で「蟹工船」ブームが起こった。6月には、東京・秋葉原で、加藤智大被告が無差別殺傷事件。事件後、舛添要一厚労相は「(犯人が)派遣労働者だから問題があるという認識ではないが、問題の背景に派遣労働があるという認識は持っている」と述べ、日雇い派遣の禁止など、派遣法の規制強化に関する議論が始まった。
派遣労働者、期間労働者、請負労働者、パート、アルバイト。呼称や雇用形態はさまざまだが、このような非正規雇用従業員が企業の事情によって解雇される「派遣切り」(雇い止め)が、連日報じられている。
失職後、寮の退去を余儀なくされるケースが続出、中には所持金百数十円で無銭飲食し逮捕された事例も出ており、「派遣切り」は深刻な社会問題となっている。
昨年12月26日、厚生労働省は、期間満了や解雇による雇用調整で今年3月までに職を失う非正規雇用従業員が8万5,012人(北海道は1,663人)に達するとの調査結果を発表した。この数値は昨年11月に公表された3万0,067人をわずか1カ月で大幅に上回る内容となった。雇用形態別では、派遣労働者が5万7,300人、期間工などの契約労働者が1万5,737人、請負労働者が7,983人、パートなどその他が4,037人、いずれも製造業が大半を占めた。
道内でも非正規雇用従業員は年々増加している。総務省の「2007年就業構造基本調査」では正規労働者が61.8%、非正規労働者が38.2%だった。非正規雇用従業員の全国平均は35.5%。北海道は最も高い沖縄県(40.7%)、京都府(40.0%)、大阪府(38.6%)に次いで高く、5年前の調査から2.9ポイント上昇した。
「派遣切り」が加速度的に進んだ要因は「百年に一度」とされる不況だが、その背景に潜んでいたのは「偽装請負」。
非正規雇用従業員の大半は雇用期間が定められている。企業にとっては業績が悪化した際、人数の調整が容易であり、バブル経済崩壊後、非正規雇用従業員は増え続けている。
99年の労働者派遣法改正で、それまでは専門的な業務に限られていた派遣労働が原則自由化された。さらに04年からは製造業への派遣が解禁された。解禁以降、製造業は他社の労働者を指揮監督下で働かせる場合、派遣契約を結ばなければならない。
ところが、実態は労働派遣法に基づく使用者責任や義務を負わないまま、「請負」の形で派遣労働者を働かせる「偽装請負」が横行した。「請負偽装」は06年頃から相次いで発覚、社会問題となった。
こうした問題から07年3月には派遣法が改正され、従来は最長で1年だった派遣期間が3年に延長された。派遣期間の延長を見据えた各社は、その前年である06年、「請負」から「派遣」への切り替えを進めた。そのため、06年から派遣となった大量の労働者は、3年後の今年、契約期間を終えることになる。
期間を満了した派遣労働者に対する製造業の選択肢は、正社員や期間工として雇用するか、契約を更新しないのいずれか。現在の経済情勢からすると、派遣労働者の大量失職が予測される「2009年問題」は、一層の雇用不安を招く恐れが高い。










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