ある父親は、評議員とのコネを作るために、子どもが1歳の時から、都内の豪華なフレンチレストランや高級会席料理店で会食を重ねている。そこで知り合った紹介者から紹介者へとたずね歩き、すでに500万円以上使ったが、まだ有力なコネクションには辿り着いていないという。
こんな芸当は、1日数百円で暮らす下流にはできないどころか、想像にも及ばないだろう。ただでさえ、小学校から大学まですべて公立で学んでも1300万円以上の教育費がかかる現在、年収300万円前後のワーキングプアにはもちろん、年収400万円の正社員でも、子息に高等教育を受けさせることなど不可能になっている。
もはや教育の機会均等は崩壊して、親の格差によって、子どもの人生も決まってしまっているのだ。
ある市の調査によると、その市の生活保護受給者の4分の1が、その親世代も生活保護を受けていたことがわかった。また、母子家庭の4割も、同じく親世代が生活保護を受けていた。
まさに「蛙の子は蛙」、「下流の子は下流」ということで、貧困の連鎖による格差固定が現実になっている。
支援策の資金が民間企業への人件費としてバラまかれた
本来なら社会には、弱者を守ったり救済したりするための数々のセーフティネットであったはずである。これまでは、その役割を日本政府や労働組合が行ってきたが、現在では機能不全に陥っている。
いまや労働組合の組織率は全就労者数の18%でしかなく衰退の一途を辿っているが、日本の組合が産業別組合という形態なので、正社員しか労働組合として組織化されておらず、経営側に対して派遣や日雇いなどの非正規社員はまったくの無力なのだ。
それどころか正規社員は自分たちの雇用が危なくなるということを考えれば、非正規社員と連帯することなど考えにも及ばないだろう。最近やっと非正規雇用社員のための組合ができて、参加する人も増えているようだが、まだまだ力不足は否めない。
一方、セーフティネットに責任を持たなければならない政府当局は、政策が後手後手に回り、有効な対策がたてられていない。安倍前内閣の目玉政策であった「再チャレンジ支援策」は、2006年に打ち出されたが、ばらまきと人件費に消えてしまった。
ニートやフリーター向けにカウンセリングや就職指導をおこなうジョブカフェを全国に設けたが、委託先であるリクルートや富士通などの民間企業に法外な人件費を吹っかけられて頓挫した。なんと民間委託先の人件費として、1日12万円も計上されていたのだ。
ニートやフリーターが日雇いや派遣で稼ぐ日当は、5000円から7000円だから、およそ20倍以上の人件費を支払っていたわけだ。これによって、20億円がリクルートに人件費として消えたのだ。
企業は派遣や日雇いを雇用の安全弁として利用しながら、一方で貧困ビジネスの対象としても、そこから利益を得ている。まさに二重に貪る、ダブル搾取ともいうべき構造なのだ。
政府としては、政策を細部までしっかり精査してチェックする能力が欠けていたというべきで、いくらよい政策を打ち出しても、画餅では費用を使うばかりで実行しない方がましだろう。
「高級官僚になるのはバカ、目指すは国連職員」
最近よく、政府の政策実行部隊である官僚の能力が欠如しているといわれている。なぜだろうか?