ある調査によると、世界のトヨタの系列会社で1万人以上の人員削減策を打ち出しているにもかかわらず、今期の経常利益の見通しは9000億円もあり、株主への配当はここ8年で5倍にも膨らんでいる。
そのうえ企業の預金といわれる内部留保も17・4兆円とケタ外れに大きくなっている。この数字を見ると、リストラをするどころかますます儲かって、株主へ利益を還元している状況にある。それをなぜ今リストラを断行しようとするのか?
答えは1つ。株価の安定を図るためだ。国際市場の垣根がなくなった現在、あらゆる手段を使って株価を上昇させることが企業の命題になってきている。したがって、リーマンショックによる世界的な経済危機の中で、何も対抗策を講じないと、それだけで株価が暴落してしまう危機にあるのだ。
だからこそある程度利益が上がっていても、リストラ策を発表して、市場に好印象を与えようとしている。かつて家族的経営を誇った日本企業も、従業員より株主がいちばんの時代になったわけである。現在の日本市場では、外国人の株主が半数以上で、それもファンドや法人などが大株主になっている。今後景気が回復基調になったとしても、株主重視・従業員軽視の政策は不変である。
子息の教育に400万円かける富裕層
つまり、これから先も、下流は下流を再生産して身分として固定されていくのだ。一昔前なら、貧乏でも努力して優秀な大学を卒業すれば出世する道もあったが、教育格差時代の現在ではそれも不可能に近い。
いまや公共教育では、まともに読み書きや計算もできない若者が増えている状況で、それ相応の学力を身につけるなら、予備校や塾、家庭教師などプラスアルファの教育を受けなければならない。
例えば、誰でも知っていて「エスタブリッシュ小学校」いわれる慶応幼稚舎に合格するには、塾や家庭教師、お絵かき教室などで、最低でも年間400万円くらいの教育費がかかるといわれている。この学校は、セレブの子弟が通い、ここで培われた人間関係は大学を卒業して、実社会に出た後も、あらゆる面で発揮されて、結束力の固さも類を見ない。
だからこそ、どんなに難関であろうと入学させたいと考えるのだろう。知能テストなどのペーパーテストは行われず、グループ内での行動観察やお絵かき、工作、体操能力などで合否が決定するが、20倍以上の狭き門となっている。
合格率が高いとされる有名幼稚園やお受験のためのお教室に通わせるために、わざわざ引っ越したり、高級マンションを借りたりすることも、いまや常識のようだ。
また、慶應義塾の意思決定機関である「慶應義塾評議員会」の委員の推薦状が合格の最低条件であり、実際には慶応幼稚舎出身者の推薦状しか効力がないなど、まことしやかに囁かれている。だからその推薦状を得るために両親は涙ぐましい努力をする。次にその一例を紹介しよう。