「受け入れたくても受け入れられない」救急医の悲鳴を聞いてください!(第7回)

March 11, 2008 6:17 PM

本日から「NEWS ZERO」において3夜連続で
「救急医療崩壊」の問題を取り上げます。

1夜目の今夜(午後10時54分から放送)は、重症患者の受け入れを担い
「命の砦(とりで)」と言われる「3次救急」(救命救急センターなど)の過酷な実態を特集します。

医療現場からは〝たらい回し〟という言葉を使うな、というおしかりを受けてばかりですが、
その背景には「受け入れたくても受け入れられない救急医療の現実」があることを、
今夜の特集ではお伝えしたいと思っています。

2夜目のあす(3月12日)は、「3次救急に患者が集中してしまう構造的問題」として
「2次救急」が抱える問題を考えます。

さらに3夜目のあさって(3月13日)は、医療を救うために今、私達に出来ることを
考えます。そのひとつの答えが、このブログでも何度もご意見をいただいた
「いわゆる『コンビニ受診』を減らすこと」だと考えます。

今夜から3夜連続の「NEWS ZERO」ACTION「救急医療崩壊」の特集、
ぜひご覧下さい。そして、皆様から、ご意見をお聞かせ願えたらと思います。

さて、救急崩壊といえば、折しもきょう、救急現場の窮状を物語るデータが
公表されました。

総務省の消防庁がまとめたもので、
「救急搬送における医療機関の受入状況等実態調査の結果について」
と題された調査資料です。

2007年に行われた全国の救急搬送のうち、
①重症の患者、
②妊婦(産科・周産期傷病者)、
③小児、
④救命救急センター、の4つのカテゴリーに関して、
「救急隊員が何回受け入れ照会をしたか回数ごとの件数」、
「病院が受け入れに至らなかった理由」などについてまとめたものです。

総務省消防庁のホームページ上でも公開されていますが、
少し内容を紹介しますと、以下のような実例があげられています。

仮にケースA、ケースBと名づけましょう。

ケースA
「受け入れ照会回数50回。東京都で2007年3月の平日夜間(20時~22時)、
70歳代の女性が自宅で呼吸苦を訴えたもの。
救急隊が39回、警防本部が11回照会を実施し、二次救急医療機関に収容した。
初診時傷病名「肺炎」初診時程度「重症」。救急車の現場滞在時間253分。」

ケースB
「受け入れ照会回数35回。東京都で2007年5月の休日昼間時間帯(14時~16時)、
幼児(男の子)が公園内の遊具から墜落し、上肢を骨折したもの。救急隊で22回、
警防本部で13回照会するも、処置困難を多数理由としていずれも受け入れできないとの
回答。最終的に二次救急医療機関に収容した。初診時傷病名「左手関節開放骨折」
初診時程度「中等症」。救急車の現場滞在時間59分。」

最近、こうした事例の報道が多くなっているため、
つきつけられてもそれほど驚かなくなってしまっているのが怖いのですが、
ケースAは、何と253分間、つまり4時間以上も救急車が動けなかったという事例です。
飛行機なら海外に行けるほどの長い時間です。

ケースBは、公園で男児が遊具から落ちて手を骨折、という、とても身近な事例です。
救急車を呼ぶ側の気持ちはわかる気がします。しかし、34件断られ、59分間救急車は動けず。

もちろん、これらは「ワースト」に近い「代表例」ですから、
ここまでの例が、各地で頻繁に起きているとまでは言えませんが・・・。

総務省消防庁は、今回こんな数字も明らかにしています。
「11回以上救急隊が受け入れの照会をしたケース」は年間1329件。つまり全国で1日あたり3.6回。
「6回以上」だと年間7939件。つまり1日あたり21.8件。
「4回以上」は年間23897件。つまり1日あたり65.5件。

今夜もどこかで、救急患者が救急車の中で何十分も待ち続けなければならないのです。
(軽傷者が救急車を使いすぎという問題も、もちろん考えなければなりません。
救急医療を圧迫している相当大きな問題だとは思います。)

何もしなければ、もっとひどくなっていくでしょう。
そんな社会をいったい誰が望んでいるでしょうか。
「救急医療崩壊」の問題。他人事ではありません。
私たちの命の問題です。
国民一人一人が、今すぐ、自分のこととして、真剣に考えることが求められています。

まずは、ZEROの特集を見て、ご意見をお寄せいただければと思っています。


posted by 森田公三 at 18:17|コメントを読む/書き込む (108)

今夜のZERO「櫻井翔キャスター×未来の医者たち」(第6回)

March 3, 2008 9:34 PM

その後も引き続きたくさんのご意見をいただき
本当にありがとうございます。

きょうは、まず番組のお知らせをさせていただきます。
今夜の「NEWS ZERO」(午後10時54分から放送)では
「イチメン×ACTION」と題したコーナーで
嵐の櫻井翔さん(ZERO月曜キャスター)が
医学生たちと本音トークするほか、実習のようすに密着します。
「医者の卵たち」の目に「医療の現実」はどう映っているのか。
ご覧いただければと思います。

4年前に始まった新しい臨床研修医制度によって
若い研修医たちは、研修プログラムの中で
産婦人科などの「きつい診療科」を実際に経験するようになり、
その結果、きつい実態を目の当たりにして
そういった診療科をますます敬遠してしまうようだ、という指摘が
現場の医師達の間から聞こえてきます。

産婦人科などは過酷な勤務実態に加え、訴訟リスクも高く、
若い研修医たちからすれば、「割にあわない」科なのでしょう。

まずは、産婦人科などが「3K」などと呼ばれている実態を
変えることが先決ではありますが、
「割にあわない」ということで若者たちが敬遠しているのであれば
それはとてもさびしい気がします。
もちろんこれは医者でもない立場からの勝手な意見であり、
お医者さん側からは「わかってないよ」と批判を受けそうですが・・・。

若い人たちの志す診療科が偏っていると、将来の医師不足、
医師偏在の問題がさらに深刻になることは、誰の目にも明らかです。

この「誰の目にも明らかな」ことに対して、何ら有効な手が打てない。
ここに、この医師不足に関する問題の根深さがあると、あらためて感じます。

「ZERO」では、今後も医療崩壊の実態と問題点をお伝えすべく
鋭意、取材を展開中です。
これまで以上に皆様からの熱のこもったご意見をいただければと思います。

posted by 森田公三 at 21:34|コメントを読む/書き込む (30)

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