劇的な成功を収めた5年間だった。東京に見切りをつけ、活路を求め北海道へ。懸命な地域密着の努力で動員を伸ばし、チームも2度のリーグ優勝。地方から野球人気を再興する球団運営の先陣を切り、球界の救世主となった。
「『ファンサービス・ファースト』という信念を持って、色々な地域密着の努力をしてきた(※1)。さらに集客を高めれば、一般の経済に貢献できる。まだ球場に足を運んだことがない方々に来てもらうには、何が足りないのか。それを深掘りしていくのが、次の5年間の仕事でしょう」
移転6年目を迎え、大社オーナーは「平日の動員がカギ。札幌ドームに1度も来たことない人に、新たなファンになってもらわなくてはならない」と、まず札幌市民に広くアンケートを実施する。野球に興味がないという人に「なぜないのか」という所から聞くなど、徹底した市場調査を行いたいという。
そして近未来には、完全な“東京撤退”もありそうだ。「非常に難しい選択だが、交流戦のおかげで、東京のファイターズファンは主催試合でなくとも(首都圏で)観戦できる」。かつての拠点・東京ドームでは今季も8試合を行うが、これを減らしていき、道内の地方試合を増やしたい意向だ。
しかし、週末は集客力のある札幌で試合を組みたいのが必然。そこで今季、初めて旭川で平日にデーゲームを行う(8月18、19日、対楽天)。これが成功すれば、ナイター施設のない道内他球場への進出(※2)へ弾みがつきそうだ。
「動員を上げるには、北海道出身監督もインパクトがあるでしょう。でも、優先すべきは勝利。3年目の日本一で一気にファン層が広がったように、勝利こそが最大のファンサービス。5年間で2回もリーグチャンピオンになれたのはすごいことだが、この先『あれは何年前のことだった?』といわれないようにしたい」
大社オーナーは最後に、地域貢献でも公式戦でも“常勝”を目指すと表明した。
※1 移転後の地域密着策には「YOSAKOIソーラン祭り」など地元行事への参加やOB、北海道出身選手による野球教室、食事会、学校訪問、球団マスコットのイベント派遣などがある。
※2 今季公式戦を行う道内地方球場は、旭川スタルヒン球場(2試合)、函館オーシャンスタジアム(2)、釧路市民球場(1)、帯広の森野球場(1)の4球場。
大社 啓二(おおこそ・ひろじ)
1956(昭和31)年1月7日、香川県生まれ、52歳。日本ハム創業者で球団オーナーだった大社義規氏の長男で、中大卒後、80年に同社入社。05年に義規氏の死去(享年90)後、オーナーに就任する。Jリーグ・セレッソ大阪を運営する大阪サッカークラブの非常勤取締役でもある。
★影響力デカイ…Jよりプロ野球
大社オーナーはJリーグ・セレッソ大阪の非常勤取締役でもある。野球とサッカー双方の経営に携わるという立場から、「地域密着の理念はJリーグに学ぶものが本当に多くある。しかし、Jリーグの波及効果はクラブのある地域に限られており、社会的な影響力はプロ野球の方が大きい。スポーツ界のリーダーシップをとるのはプロ野球で、それに見合った行動を取るべきだと思う」と球界へ提言した。