2011年春に全線開業予定の九州新幹線を利用し、緊急治療が必要な妊娠中の女性や胎児、新生児を搬送する計画が医療関係者とJR九州との間で進んでいる。産婦人科医や小児科医の減少などで救急搬送先が決まらない「たらい回し」が全国的な問題となる中、より広域の医療連携を実現する手段として時間に正確で速い新幹線に注目が集まる。
「新幹線搬送」は福岡、熊本両市の医師会が08年7月、JR九州に要望した。JR側も「搬送時に必要な医療機器は医師会側が用意する」ことなどを条件に、授乳や気分が悪くなった乗客のために設けている多目的スペースを使った搬送の検討を始めた。
医師会などによると、NICU(新生児集中治療室)での処置が必要な新生児や、出産直後から母子ともに高度な医療技術が必要な時に搬送を想定している。熊本-博多間だけでなく鹿児島県まで含める方針だ。
計画について、JR九州の石原進社長は「多目的スペースには子供用ストレッチャーの収用が可能だ」と述べ、実現に前向きな姿勢を見せている。
福田稠(しげる)熊本市医師会長(産婦人科医)は「新幹線搬送は夜間飛行できないドクターヘリや時間がかかる救急車の欠点を補う。将来は山陽新幹線で京阪神方面への搬送も検討してもらえれば、より適切な医療を提供できると思う」と期待している。【高橋克哉】
2009年1月3日