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【社会】

育て 作画の職人 都がアニメ『教科書』 中韓台頭で“大国”危機感

2009年1月3日 朝刊

 「アニメ大国・ニッポン」を継承する人材を育成するため、東京都は、アニメ業界を志す人たちのための「教科書」を作った。制作の流れや作画の基礎など、最低限、身に付けておくべき作法をまとめた「教則本」だ。制作現場が求める人材は不足しており、業界の今後を見据えた後継者の育成は急務。国家戦略で育成に取り組む韓国や中国が台頭していることもあり、業界の危機感は強い。 

 「アニメの教科書」は、都と業界団体「日本動画協会」、アニメの専門学校が連携し、二年越しで完成させた。

 アニメ関連のプロダクションは都内に集中していることから、「東京の地場産業」と位置付け、都は製作費として二〇〇八年度までに計二千九百万円を支出した。

 「日本のアニメ産業」「アニメの制作」「作画の基礎/仕上・美術」「原画素材集」の計四巻で構成している。

 アニメは、デジタル化が進んでいるが、手描きに頼る部分は多いため、作画力を養える内容にした。全国に二百カ所くらいある専門学校の教育と、制作現場が求める人材とのミスマッチをなくす狙いがある。

 日本動画協会の清水義裕さんは「各プロダクションとも体力がなく、即戦力が欲しい。アニメ業界を目指す人は、教科書の内容を常識として頭に入れておいて」と話す。

 都産業労働局は「もともと職人の世界だが、(下積みに当たる)動画制作の部分は中国や韓国へ外注が進んで、日本でアニメーターを養成する機会が失われた」と背景を説明する。

 都はアニメ産業支援のため〇九年度にも、現役アニメーターらを対象に、教科書の内容を教えることのできる指導者の養成に乗り出す考えだ。

 教科書は初版三千部で、四巻セット一万二百九十円。今月七日から、東京アニメセンター(千代田区外神田四)内で販売する。

 

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