「100年に1度」と言われる不況に襲われた昨年。世相を反映すると言われるテレビCMはどんな作品が放送されたのだろう。またオバマ氏が米大統領に就任し本格的に変革の時代を迎えそうな今年、CMもCHANGEするだろうか? 広告とマーケティングの専門誌「宣伝会議」(毎月1、15日発売)などを発行する宣伝会議の田中里沙編集室長に聞いた。
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景気悪化の影響か、各企業ともCMを流す本数は減っています。それでもインパクトを持たせてCMは目立たせたい。そこで存在感が大きな目立つ人を起用しがちです。ここでも「勝ち組」に集中している感じですね。
企業が求めるのは、自分の個性や考えをきちんと表現しているクリエーティブなイメージのタレント。視聴者に商品を知ってもらうだけでなく、できれば一歩進んで好きになってもらいたい。だから当たり障りのないきれいな人よりも、情報があふれる今の時代にきちんとメッセージを伝えてくれる人が好まれます。
例えばランキングに入っている玉木宏や妻夫木聡。女性では堀北真希、上戸彩、相武紗季、宮崎あおい。昔だと起用をためらったような力強い個性を感じる人たちです。バラエティー番組などでそのキャラクターが知られるようになったベッキーもそうした一人と思います。誰とでもすぐ打ち解けられるのに、芯はぶれない。時代の閉塞(へいそく)感を突き破ってくれそうな明るく、アクティブなイメージでさらに活躍の場を広げそうです。昨年の大河ドラマ「篤姫」に出演していた瑛太も今後起用が増えるのではないでしょうか。
もう一つの傾向は、山口智充や世界のナベアツ、エド・はるみらお笑いタレントの出演が一昨年に続き多かったこと。テレビで最近、若手がネタを披露する番組が増えていて、露出が増えた分勢いがあるのでしょう。逆に、昔は多かったデビューしたばかりのフレッシュなアイドルやスポーツ選手を起用するケースは減っている気がします。
作品では、資生堂が「オダギリジョー 資生堂に就職」として実際に会社や工場でロケしたCMを55パターン作ったり、オンワード樫山が菅野美穂を起用したファッションブランド「23区」のCMを春夏用は46、秋冬用は23パターン作ったのも注目されました。テレビでは一部しか放送せず、サイト上ですべてを公開して、テレビとネットの連動も図っていました。
ただ余裕がある会社でないとそうした展開は難しいのも確かです。かつてはCMから流行語が生まれましたが、今はCMだけで社会現象を作るのは困難。そのため放送開始前に記者会見を開きCM自体を宣伝したり、その時点の社会現象を取り込んでその勢いに乗っかったり。昔の宣伝部はCMが流れるとほっとするという感じでしたが、最近は放送期間中も世の中の反応を見てせりふなどを手直しした新しいバージョンを投入することは普通になりました。
同じ世界観を長く展開企業戦略も「循環型」に
今年は「環境」に関するCMがさらに増えそう。「循環型社会」などの言葉は「エコ」に比べると、まだあまり一般には浸透していません。企業もそうした新しい価値観と存在感をCMを通して広めていくと思います。
同時に企業のマーケティング戦略も「循環型」に変わりつつあります。商品を売って終わりじゃなく、お客様と長く深く付き合う時代。かつてはキャンペーンごとにCMが全く違ったイメージに変わったりしましたが、それでは一度作ったブランドイメージが消えてしまいます。
短い時間で勝負するCMでは難しい面もありますが、同じ世界観のCMを長く展開するなど、そういう思考はすでに出てきています。起用するタレントは、今回のランキングに並んだような発信能力が高い人がますます重宝がられそうです。
◇たなか・りさ 1966年三重県生まれ。学習院大卒。広告会社を経て93年に宣伝会議入社。広告会社担当記者、雑誌「宣伝会議」編集長などを経て、07年から現職。広告電通賞、交通広告賞、ふるさとCM大賞、全国広報コンクールなどの審査員を務める。
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