西日本新聞

九電、第3の原発検討 熊本、宮崎が有力 2030年稼動目標 長期計画記載へ

2008年12月31日 00:43 カテゴリー:社会 経済 九州・山口 > 宮崎 九州・山口 > 熊本

 九州電力(福岡市)が玄海(佐賀県玄海町)、川内(鹿児島県薩摩川内市)に次ぐ3カ所目の原子力発電所建設の具体的な検討に入ることが29日、分かった。候補地点は現時点では白紙だが、熊本県や宮崎県などが有力。今後2―3年で絞り込み、2030年ごろの運転開始を目指す。九電の原発新規立地は1992年に宮崎県串間市で構想が浮上したが、地元の反発などで断念した経緯があり、今回も候補地選定作業の過程で大きな議論を呼びそうだ。

 原発の新規立地検討は、今後20―30年の経営の方向性を示すために来年3月をめどに策定する「長期経営ビジョン」に盛り込む。実現すると、九電の原発新規立地は84年に運転開始した川内原発1号機(加圧水型軽水炉、出力89万キロワット)以来になる。

 全国では中部電力が、運転開始から30年以上経過し、トラブルなどで長期運転停止中の浜岡原発1、2号機を廃炉にし、新機を建設する建て替え(リプレース)計画を発表したばかり。

 九電の玄海原発1号機(同55.9万キロワット)も運転開始から33年、同2号機(同)も27年が過ぎ、老朽化対策を施しても2035―40年には耐用年数が切れる。しかし、玄海原発内には、敷地に建て替えの余裕がなく、別の場所での新規立地を目指すことにした。

 九電は出力150万キロワット級の川内原発3号機の増設に向けて環境調査を実施。09年1月に地元へ正式に増設の申し入れをし、10年代後半の運転開始を目指している。その時点で同社の発電電力量に占める原子力の比率は当面の目標である約50%に上昇。早めに玄海1、2号機に代わる新規立地を実現し、原子力比率の維持・向上を図る。

 建設候補地は、原発が大量の冷却水を必要とすることから玄海や川内同様に海岸線があり、地震にも強い固い地盤であることが条件。現段階では熊本県か宮崎県内を有力視しているもようだ。

■住民に説明 不安解消を 玄海原発老朽化で決断

 【解説】九州電力が玄海、川内に次ぐ第3の原子力発電所立地の具体的な検討に入る背景には、安定電源の確保とともに、地球温暖化対策の一環で石炭や原油に比べ二酸化炭素(CO2)をほとんど排出しない原発の推進が急務、との判断がある。原発の新規立地には、九電が一般住民の根強い不安をいかにぬぐい去れるかが鍵になる。

 九電を取り巻く資源情勢をみると、化石燃料の確保は今後、新興国の経済成長などに伴い難しくなることが予想される。一方で、1975年に運転開始した玄海原発1号機が約60年の寿命まで既に折り返しを過ぎ、計画から運転開始まで30年近くかかるとされる新規立地へ「残された時間は少ない」(九電幹部)と判断した。

 92年に浮上した宮崎県串間市への原発新規立地構想が事実上頓挫したのは、86年の旧ソ連・チェルノブイリ原発事故から時間がたっておらず、地元住民の間に原発への不安が渦巻いていたためとみられる。その後、九電の原発では大きなトラブルもなく、稼働率も2007年まで6年連続で80%超になるなど安定しており、九電は原発新規立地について、当時に比べて住民の理解を得やすいとみている。

 ただ、ほかの電力会社の原発トラブルや耐震問題で、原発に依然厳しい視線が注がれているのも事実。原発増設とセットで立地されるべき使用済み核燃料を再処理するまでに一時的に保管する「中間貯蔵施設」や、放射性廃棄物を処分する「最終処分場」も、建設のめどが立っていない。

 急速に人口減少が進む九州では今後電力需要は伸び悩むとの見方もある中で、原発の新規立地がなぜ必要なのか、九電には丁寧な説明が求められる。(経済部・曽山茂志)

=2008/12/30付 西日本新聞朝刊=

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