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<アトリウム>社長が自社から20億円借金 引当金11億円

1月3日2時30分配信 毎日新聞


 大手ノンバンク「クレディセゾン」の子会社で、東証1部上場の不動産会社「アトリウム」(東京都千代田区)の高橋剛毅(つよき)社長(63)が、自社から約20億円の融資を受けてストックオプション(自社株購入権)で生じた所得税の支払いなどに充てていたことが分かった。株価低迷で担保の株の評価が下落し、ア社は貸し倒れ引当金11億円を計上した。会社に多額の損害を与える可能性があり、専門家は「上場企業としては前代未聞のお手盛り融資」と厳しく批判している。【小林直、堀文彦、鈴木一生】

 ア社によると、高橋社長は事前に定めた価格(権利行使価格)で自社株を取得できるストックオプションの権利を04年1、12月に会社から付与され、06年4月と07年3月に権利行使し計108万株を取得した。株価は当時3310〜3933円で、売却すれば権利行使価格(1株約200円、総額約2億円)との差額約39億円の利益を手にできた計算になる。しかし、うち105万株は売却せず、含み益に対する所得税と住民税計約20億4000万円を課税された。

 高橋社長はいったん自己資金と金融機関からの借入金で税金を支払った。しかし、08年4月ごろに借入金の返済期限を迎えたため、売却しなかった自社株105万株を担保に、自社からの融資に借り換えた。融資は▽08年4月21日2000万円▽同28日19億円▽08年6月25日6700万円−−の総額19億8700万円に上った。返済期限は13年で、ア社によると「金利は会社の調達金利に1%未満を上乗せした」という。

 担保株の価格は、借入時は1株1096〜1662円だったが、08年8月29日には582円に下落した。港区にある高橋社長の自宅を追加で担保設定したが、監査法人の指摘に従って回収不能に備え、08年8月中間期決算で貸し倒れ引当金11億円を計上、半期報告書に記載した。決算後、さらに高橋社長が将来受領する退職慰労金にも担保設定した。

 高橋社長は毎日新聞の取材に「株価上昇が見込めたことや、代表取締役が大量の株を売却すると会社の先行きについて誤解を与える恐れがあることなどから株を売却しなかった」などと文書で回答した。ア社は「取締役会の承認を経た融資であり適切と考えている」としている。

 民間の信用調査機関によると、ア社は79年設立。06年3月ジャスダック、同12月東証1部に上場。08年2月期の売上高約1213億円、当期純利益約124億円(連結ベース)。従業員約400人。

 ▽青山学院大大学院の八田進二教授(会計学)の話 ストックオプションは報酬であり、税金は社長個人が負担すべきだ。会社からの借金で賄うのは会社の私物化と言われても仕方がない。自社株を担保に約20億円を貸し付けたことは、返済できない場合、会社が同額で自社株を買うことになりかねず、資本を棄損する恐れがある。会社が高いリスクを負って社長に巨額の拠出をしたお手盛りの印象が強い。同族企業のようで、上場企業では前代未聞ではないか。

 ◇引当金の計上「申し訳ない」

 高橋社長は12月25、26日、毎日新聞の取材に「反省している。申し訳ない」などと答えた。主な一問一答は次の通り。

 −−株を売却せず自社から借り入れたが。

 ◆社長が株を売ったのでは投資家に株を勧められない。株価が高い時に売却益が得られるのに売らずに頑張ってきた。間違ったことはしていない。

 −−専門家が批判しているが。

 ◆必要な担保を入れ有利な条件でもない。

 −−しかし貸し倒れ引当金を計上した。

 ◆反省している。(株主に)迷惑をかけ申し訳ない。深くおわびする。

 −−株主への説明は。

 ◆半期報告書で公表した。

 −−半期報告書は短行の記載で一般の株主が見つけるのは難しい。

 ◆(総会などで)質問が出てくるわけだから。出た時には逃げも隠れもしない。

 −−責任や進退をどう考えるか。

 ◆株主が決めること。大半の株主が信任しなければ責任を取る。「業績を高め株価を上げるチャンスを下さい」と訴えていく。

 ◇ことば ストックオプションと税金

 ストックオプションは事前に決めた価格(権利行使価格)で自社株を購入する権利。権利行使価格を会社に支払って株を取得する。権利付与時より株価が上昇すれば含み益が生じる。含み益に課税せず実際の売却時に課税する特例もあるが、高橋社長のように巨額の場合は保有しているだけで課税対象になり、高橋社長の自宅のある東京都港区の高額所得者は所得税40%、特別区民税6%、都民税4%と、利益の50%が税額になる。

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最終更新:1月3日2時30分

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