二〇〇九年が明けた。米国発の金融危機がもたらした世界同時不況の波は容易に収まりそうもなく、出口の見えない不安に覆われている。雇用情勢も急速に悪化し、国全体が活力を失っているようにも思える。閉塞(へいそく)感が漂う混迷の時代をどう打破していけばいいのか、地域にとっても極めて重要な年になりそうだ。
景気後退は長期化しそうだが、朝のこない夜はない。ここは覚悟を決めて、厳しい経済環境に耐え忍ぶ粘り強さを持ちたい。合わせて、将来の成長に向けたチャンスを探るどん欲さも発揮したい。
東京への一極集中が進み、疲弊する地方との格差は広がるばかりだ。少子高齢化に伴い、国も地方も巨額の債務を抱え、財政に限界も見えてきた。急がれるのは、新たな「国のかたち」をどう再構築していくかだろう。
その処方せんの一つが、地方分権改革の断行だ。
加速する分権
これまでの中央集権システムは、地域の自由な発想による行政サービスの道を閉ざしてきた。権限や財源の移譲によりこうした状況を打開するのが、国から自立した「地方政府」だ。中央政府に代わって自治体が地域の課題を考え、解決策を示して政策を実行する。国との関係は対等で、その主人公は地域住民だ。
政府の地方分権改革推進委員会が昨年五月にまとめた首相への第一次勧告は「住民に最も身近で基礎的な自治体である市町村の自治権を拡充し、『地方政府』に近づけていく」と宣言した。
政府は今秋にも新分権一括法案の国会提出を予定するなど、分権改革の流れが加速しそうだ。中央省庁の抵抗はあろうが、「地域のことは地域で決める」という地方自治の原点が問われる年になろう。
改革の主役は市町村であり、地域の創意工夫を引き出すのが分権改革の狙いだ。市町村は「平成の大合併」で規模が拡大し、行財政基盤も強化されてきた。地方が活力を取り戻すチャンスと受け止めたい。地域を活性化させることが、国全体の活力を底上げすることにもつながるのではないか。
政令市への期待
四月からの岡山市の政令指定都市移行は、地域にとって大きなインパクトを持つ。中四国では広島市に次いで二番目、全国十八番目となる。
県から移譲される権限、拡大する財源を生かし、自立度の高い都市に生まれ変わらねばならない。中四国の拠点都市としての存在感を高め、飛躍するチャンスである。
まず、どういう都市を目指すのか、岡山らしい理想の都市像を具体的に肉付けしていく必要があろう。
都市の「格」も問われる。都市の魅力は文化度を測るバロメーターといわれる。政令市にふさわしい文化的な風格が求められる。にぎわいを創出し、観光政策でも磨きをかけねばなるまい。後楽園や岡山城、西川緑道公園といった素材の魅力をさらに生かし、情報発信力を高めることが大切だ。国内外から訪れる「交流人口」をいかに増やすかが活力への鍵となる。
まちづくりには市民の主体的な参加が不可欠だ。独自色を持つ政令市になれば求心力も高まろう。県都が輝きを増せば、県全体への波及効果も出てくるのではないか。
試される地域力
地域活性化の起爆剤としては、サッカーのファジアーノ岡山の活躍にも期待が集まる。イタリア語で岡山県鳥のキジを意味するファジアーノ。岡山に初めて誕生したプロスポーツチームである。
昨年、アマチュア最高峰の日本フットボールリーグ(JFL)参入一年目で快進撃を見せ、念願のJリーグ2部(J2)昇格を決めた。「J元年」の今年、ホームゲームには全国から多くのサポーターが来岡し、新たなにぎわいが生まれるのは間違いあるまい。
プロチームとしての活動を維持するには課題も多い。地域の誇りとしてどう支えていくか。地域力が試される年にもなりそうだ。
スポーツだけでなく、蓄積された豊かな文化的土壌をもとに地域の文化力を高めることも活性化には欠かせない。地域にこだわり、地域社会を主体的に再生するための知恵を磨くことで、地方に個性の輝きを取り戻したい。