Print this Post Article Lists Back

【コラム】放漫経営の企業まで援助する韓国政府

 「到底生き残れないような経営難の企業まで、政府と銀行は不渡りを出させないようにしているのが実情です」

 最近会った建設会社A社の社長は、韓国政府と銀行が、経営難の企業に対しても不渡りを出させないようにしているため、健全な経営をしている企業に資金が回ってこない、と訴えた。経営難の企業が不渡りを出せば、国家の信用度が下がり株価が暴落する、という懸念から、政府が銀行に圧力をかけ、不渡りを出させないようにしている、というわけだ。銀行もまた、赤字が増えることを恐れ、生き残れる可能性がない企業にまで資金の援助をしているという。A社の社長は「銀行が経営難の企業を支援するため、優良企業の資金まで回収しているせいで、資金難が建設業界全体に拡大している」と話している。実際、B社は資金難に陥るや、国営企業の工事費を前倒しして受け取り、貯蓄銀行は手形の満期を延長している。経営難の企業は政府が提供した「人工呼吸器」に依存し、ダンピングに等しい入札で公共工事を受注し、途方もない高値で土地を購入するなど、市場経済の秩序を乱してきた。

 経営難の企業のもう一つの問題は、倫理観の崩壊がとどまるところを知らないということだ。建設業界では、売れ残りの分譲住宅が15万戸近くに達するなど、危機が深刻化しており、自助努力や構造調整が避けて通れない状況にあるが、一部の建設会社は「経営難の企業もやっていない構造調整を、なぜわが社がやらないといけないのか」「経営が苦しくなれば政府が助けてくれるのではないか」などと言い張っている。

 政府は今年4月、資金難に陥っている建設会社を支援するため、債権管理組合を組織したが、現在に至るまでほとんどの建設会社はこれに加入していない。ある建設会社の関係者は「債権管理組合に加入すれば、経営権を奪われたり、構造調整を強要されたりする可能性がある」と語った。「資金難で建設会社が芋づる式に倒産しかねない」として、政府の支援を求めておきながら、債権管理組合には加入せず放漫な経営を続けているのも、政府や銀行が助けてくれるだろう、という安易な考えに基づくものだ。現金を確保するため、分譲価格を大幅に引き下げたC社の関係者は「競合会社には“自分たちだけ生き残ろうと、分譲価格を引き下げた義理を欠く会社”と非難された」と話す。また、一部の建設会社は「われわれが不渡りを出せば、地域経済全体がメチャメチャになる」などとして、政府に圧力をかけている。

 専門家たちは「このままの状態が続けば、韓国経済は1990年代の日本のような泥沼不況に陥りかねない」と懸念している。バブルが崩壊した90年代の日本で、泥沼不況が長期間にわたって続いた理由の一つが、いわゆる「ゾンビ企業」の存在だった。バブルの崩壊で不動産価格が半分以上も下がり、建設会社の赤字が雪ダルマ式に膨れ上がったにもかかわらず、不渡りを出した企業はごく少数にすぎなかった。政府や銀行が、経済に与える衝撃を緩和するという名目で、経営難の企業に対する元利金の償還期限を延期したり、金利の減免措置を講じたりしたためだ。さらに日本政府は景気浮揚策として、道路や鉄道などのインフラ整備を通じて、経営難の企業の延命を図った。このように、経営難の企業に対して大掛かりな資金援助をしても、今度は優良企業に十分な資金が回らなくなったため、結果として全般的に投資が縮小し、不況の長期化につながったのだ。

 世界的な金融危機により、一時的な資金難に陥っている企業に対しては、政府や銀行が援助する必要がある。しかし、放漫経営で自ら危機を招きながら、骨身を削るような構造調整を怠り、政府の支援ばかり待ち望んでいる企業にまで、政府が支援をすべきではない。

車学峰(チャ・ハクボン)記者(産業部次長待遇)

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

このページのトップに戻る