米カリフォルニア州のハリウッド。ジェームス・ディーンのそっくりさんが街灯にもたれ、観光客に声をかけられるのを待っていた=中田徹撮影
仏金融大手ソシエテ・ジェネラルの投資銀行部門は、金融危機が深刻になった昨年10月末、映画にカネを出すのをやめることにした。公式の発表はなく、一部の記者に「財源をより成長率の高い分野に移さなければなりません」とそっけないメールを送っただけ。米業界紙によると、20世紀フォックスなどハリウッドの製作会社と数億ドルの融資を何本も契約していたという。
「2千万ドル(18億円)クラブ」と呼ばれる高給とりのスターをそろえ、最新のデジタル技術を駆使する最近の大作は、1億ドル(90億円)規模のカネを食う。成功すればDVDや関連グッズの収益が世界中で見込め、もうけも大きい。しかし、ヒットしないリスクも高い。
90年代半ばからは、完成後のもうけを受け取る権利と引き換えにカネを集める手法も使われるようになった。十数本分の映画の配分受け取り権を束ねたうえで小口に分け、「格付け」をとって投資家に売る。世界中の資金を吸い込んだサブプライム(低所得者向け)住宅ローンでも使われた「証券化」だ。
不況でも観客は減らないとされる映画産業だが、「カネ食い体質」になった今は金融危機の打撃がもろに響く。スティーブン・スピルバーグ監督(62)の製作会社ドリームワークスは、昨年、インド企業の資金で映画を撮ることを決めた。これまでの手法ではカネが集まらなくなったため、とうわさされる。
資金が切れれば、リストラが待っている。ワーナー・ブラザースはアート系映画を作る子会社を相次いで閉鎖。NBCユニバーサルは5億ドルの経費削減を目標に掲げ、パラマウントは年間の公開本数を2割減らす。
■遠ざかる観客
もう一つ、より根深い危機がある。巨額の資金投入と裏腹に、ハリウッドに染みついてきた「打ち上げ花火」的な映画そのものの行き詰まりだ。