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真央「最大の敵」は採点法

AERA12月 8日(月) 12時40分配信 / スポーツ - スポーツ総合
――試合後、「自分のジャンプの感覚が戻ってきた」と嬉しそうに語った。
その笑顔の前に立ちはだかるのは、韓国人選手ではなかった。――

 浅田真央が、フィギュアスケート・NHK杯2日目フリーで、目標と宣言していた「1演技中2回目のトリプルアクセルジャンプ」。認められれば、女子国際大会史上初の快挙になるはずだった。
 結果は「回転不足」で、認められなかったが優勝、12月12日から韓国で開かれるグランプリファイナル戦の出場を決めた。
 それにしても、浅田は2週間前のフランス杯で、ジャンプのミスを連発、転倒もした。シニア転向後、自己最低の167・59点で2位。プロスケーターの佐野稔さんでも、
「正直、天才ジャンパーが、やばいぞと思いました」
 と言う状態だった。

■金との差は2・32

 今季、浅田には変化があった。練習拠点を日本に移すため、米国で指導を受けていたコーチから離れ、荒川静香などを育てたロシアのタラソワ・コーチについた。3月からは専属トレーナーと栄養士をつけて、肉体改造と食事管理にも取り組んできた。
 伊藤みどりさんは言う。
「これまでは、ただスケートが大好きで滑っていたのが、体つきも変わってきて技術面が崩れ、精神面とかみ合っていない印象があった。その大きな山を乗り越えた感じがします」
 ひとまず、スランプ脱出にはホッとするが、気がかりな点もある。今回、浅田の演技は大きなミスが少なかったのに、点数が伸びなかったのだ。
 浅田の点数は191・13点。ライバルの金妍児(韓国)がアメリカ大会で取った193・45点には及ばない。金妍児の壁は厚いのか、と思いきや、伊藤さんは意外なことを口にした。
「フィギュアスケートの採点方法が、演技をより正確に、確実に、明確にという昔の『規定』があったころに逆戻りしつつある。これが厳しいんです」
 今季から、選手がジャンプの回転数を落とす「安全策」に走るのを避けようと、採点方法が変わり、難しいジャンプの基礎点が上がった。だが、回転数が少ないジャンプは基礎点が激しく減点されるようにもなっており、転倒した時より減点幅が大きいケースが続出した。
 例えば、今回、浅田の1回目のトリプルアクセルには3回転半の基礎点8・20点に、GOE(技のできばえ)という評価点が上乗せされて9・80点がついた。だが、プロの荒川さんから見ても「回転できている」と見えた2回目は、回転不足と判定され、基礎点が「2回転+二つ目の2回転ジャンプ」扱いになった上にGOEでも減点され、計4・00点。転んでもいないのに6点近くも差が開くのだ。佐野さんはこう話す。
「いまの判定は重箱の隅をつつくばかりか、その箱を分解して、中に虫がいないか調べるようなもの。選手の演技に与えている影響は大きい。ジャンプそのものが変わる可能性がある」

■来年は「浅田有利」?

 だが、浅田は発言のたびに「攻める気持ち」を口にし続けてきた。中でも佐野さんが注目するのは、浅田が苦手と公言してきた「サルコージャンプ」をあえて入れ、成功させたことだ。
 分厚く見える「採点方法」だが、光が見えない訳ではない。佐野さんによれば、今年7月の国際スケート連盟総会では、アクセル以外のトリプルジャンプ5種を入れたらボーナス点を加えることが検討されたという。
「来年可決されたら、面白いことになる。多くの選手は得意なジャンプだけに挑戦し、トリプルを軽視する傾向があった。浅田は苦手のルッツも、今回ショート演技で成功させている。トリプルアクセル2回のほか、フリーでルッツを入れるなど、ジャンプが多彩な浅田には点数を取れるところがまだたくさん残されています」(佐野さん)
 まずは今季のグランプリファイナル。進化し続ける「天才真央ちゃん」は「最大の敵」を倒し、金妍児に勝てるか。
編集部 福山栄子
(12月15日号)
  • 最終更新:12月 8日(月) 12時40分
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