テレビは本当に怖いメディアである。テレビの番組にコメント役としてかかわり始めて、つくづくそう感じる。
例えば昨秋の自民党総裁選。一部の識者は候補者5人が連日のようにテレビ出演しているのを指して「テレビは政治利用されている」と例によって批判したが、違うと思う。総裁選がいかに茶番か、テレビはそれをそのまま映し出したのだ。総裁選を失敗させたのはテレビだったと言ってもいいほどだ。
麻生内閣のいきなりの行きづまりは「メディアに出てさえいれば盛り上がる」と錯覚したことに始まる。「ナントカ劇場」の時代を経て国民の政治を見る目は一段と肥えてきたことに、自民党は気づかなかったのだ。
今年は自公政権の継続か、交代かを有権者が選ぶ年だ。パフォーマンスや演出ではなくて、この国をどうしていくのか、どの政党が一番まじめに、誠実に政策を訴えていくかが選挙結果を左右する予感がする。
民放テレビも最近は報道など硬派の番組を増やす傾向にある。深刻な雇用崩壊。出口の見えぬ世界不況。そして国民意識の変化を考えれば当然の流れだろう。そう、メディアの世界もカギは「まじめさ」である。
テレビに関与していて感じる点をもう一つ。それは番組の基になる情報にせよ、どう物事を見るかという論調にせよ、今もかなりの部分について私たち新聞が頼りにされていることだ。
生意気な言い方かもしれないが新聞はそこにもっと自信を持っていい。こんな時代こそ新聞。いずれ来る衆院選の投票にあたり少しでもみなさんの参考になれば、という思いで私もこのコラムを書いていくつもりです。
毎日新聞 2009年1月1日 0時27分
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