二〇〇八年が間もなく暮れる。この一年、世界で起きたさまざまな出来事を共同通信と山陽新聞社など加盟社が選んだ十大ニュースを軸に振り返る。
一位は「米国発の金融危機が拡大 世界不況に」である。米国の住宅バブル崩壊によるサブプライムローン焦げ付き問題が、九月の米証券大手リーマン・ブラザーズの破たんをきっかけにして一気に表面化した。
金融危機から世界不況へと発展した。「百年に一度の経済危機」とまでいわれるが、問題は起こるべくして起こったとされる。
米ブッシュ政権は、経済政策で「自由の拡大」を追求した。経済活動への政府の介入抑制の理念は新自由主義と呼ばれた。市場万能の新自由主義がもつ負の側面から目をそらしてきた失政といえる。この教訓から世界が何を学ぶか。大きな課題といえよう。
変革への期待
十大ニュースの二位も米国に関するものだ。十一月の大統領選で「変革」を訴えた民主党のオバマ上院議員が、共和党のマケイン上院議員に大勝した。
来年一月二十日に米史上初の黒人大統領が誕生する。人種の偏見が根強い米国で、国民が黒人の大統領という歴史を塗り替える選択をしたのは「何とかして苦しい現状を変えてほしい」という切実な思いの表れだろう。
混迷から脱しきれないイラク情勢、悪化の一途をたどる景気や雇用環境などブッシュ政権の「負の遺産」が山積する。十大ニュースの六位に入った北朝鮮に対する米国のテロ支援国家指定の解除もその一つではないか。
ブッシュ大統領が政権末期に外交遺産を残そうとして焦り、明確な将来展望のないまま重大な決断を下したとされる。その後の六カ国協議に大きな進展はなく、北朝鮮外交のしたたかさが目立った。
米国の内外で、オバマ氏が唱える変革に注目が集まる。期待が大きいだけに、失望感を招けば反動は急速に拡大しよう。さまざまな問題で時間的な余裕はないだろう。就任当初から具体的な成果が求められる。
民主化が必要
アジアに目を向けると、三位に「中国・四川省で大地震 死者・不明八万人超」、五位に「中国で初の五輪開催 チベットで暴動、聖火リレー混乱も」と中国がらみのニュースが目を引いた。
四川省の大地震は、五輪開催前の五月に起きた。日本を含め世界各国で緊急援助の動きが広がった。状況は大筋で安定化したようだが、復興への道のりは険しいだろう。今後も国際社会が関心を持ち続けることが大切だ。
北京五輪は中国の歴史とマンパワーを強調した華やかな開会式で幕を開けた。懸念された大規模なテロも起きず、中国は「世界各国との相互理解と友好を増進した」と総括した。
北京五輪は中国台頭の象徴ではあった。しかし、チベットでの人権抑圧などに抗議し、聖火リレーの妨害が各地で相次いだ。中国が抱える諸問題が浮き彫りになり、民主化の必要性を痛感した。ただ、西側の民主主義の押し付けは好ましくない。中国の国情に合った民主化を辛抱強く後押ししていくべきだろう。
相次いだテロ
テロのニュースも世界を駆け巡った。八位は「インド経済の中心地ムンバイで同時テロ」、十位は「アフガニスタンの治安が悪化 伊藤和也さん誘拐・射殺」だった。
特にアフガンではテロが続発した。日本の非政府組織「ペシャワール会」の一員だった伊藤さんが武装グループに殺害された事件では憤りと深い悲しみが列島に広がった。
テロ撲滅は容易なことではない。テロの温床になりやすい貧富の差拡大などの問題に世界が連携して粘り強く取り組む必要がある。
このほか四位は「原油価格、食料価格が高騰」など十大ニュースに明るい話題はほとんど入らなかった。残念としか言いようがない。
国際社会は平和で安定した世界から一段と遠ざかっているのだろうか。経済情勢の急激な悪化などで不安材料は増すばかりだが、来年は少しでも多くの喜ばしい出来事を期待したい。