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医師確保険しく 来春産科医0の日製病院

2008年12月22日

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県北の地域医療を担う日製総合病院。来春以降の産科医確保に関係者は奔走しているがまだめどはつかない=日立市城南2丁目

 昨年まで県内の医療機関で最多の出産を取り扱ってきた日立製作所の日立総合病院(日製病院)から来年3月、産科医全員が派遣元の大学に戻る。病院は医師確保に懸命だが、全国的な産科医不足のなか、脳出血を起こした妊婦が7病院に受け入れを断られて死亡した都立墨東病院問題のあおりも受け、見通しが立たない状態だ。
(大塚隆)

 日製病院の産科医は現在4人と、わずか2年余りで半減した。それでも勤務医の奮闘で出産件数はここ数年1200件前後を保っていたが、8月からの新規受け付け中止の影響で今年度は990件程度に減少する見込みだ。残る4人の産科医も大学側の強い要請で来春には医局へ帰る。

 ●一時は光明も

 日製病院は新規受け付けを中止した8月以降、周辺の病院を案内している。日立市が母子手帳交付時に受診中の医療機関を調べたところ、5月には半数が同病院を使っていたが、10月は4%弱だった。

 来春以降の産科維持のため、日製病院は都内のある医大病院に絞って常勤産科医の派遣を要請し、一時は前向きの感触を得た。だが、10月に都立墨東病院問題が明るみに出て、都が産科医の確保に全力を挙げ始めたため、「どの大学も地方の病院に産科医を派遣することに二の足を踏んでいる」(関係者)という。

 日製病院は産科医不足に対応できるよう、正常分娩(ぶん・べん)の場合は助産師が対応する院内助産所の開設準備を進めている。ただ、突然の出血などでハイリスク分娩への対応を迫られる場合もあり、「院内助産所でも産科医による管理が重要」(岡裕爾院長)と、産科医常勤が大前提だ。

 ●広がる影響

 産科は24時間の緊急対応が必要で、訴訟リスクなども敬遠されるため、産婦人科の看板を掲げながらも、婦人科だけにする施設が急激に増えた。日立市でも産科の開業医は瀬尾医院だけだ。

 日製病院は県北地域の地域周産期母子医療センターに指定され、県北で唯一、未熟児などの新生児医療に不可欠なNICU(新生児集中治療管理室)を持つため、「日製病院の産科が休止されると、緊急時には水戸や県南まで救急車で搬送する事態が起きう
る」(瀬尾医院の瀬尾文洋院長)という。

 日製病院は「年内に何とかめどを」と、あらゆるつてを頼ってOBらにまで協力を求めている。日立市も「産科休止は町づくりの根幹にかかわる」(大和田進・保健福祉部長)と、産科医確保に向けた財政支援などの方針を固めている。だが、事態を打開するめどはまだ立っていない。

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