クリアチャネル社が提供する自転車のモデル
MCドゥコー社が提供する自転車のモデル。いずれも利用者がカードを使うなどするとロックが外れ、自転車の貸し出しを受けられる=2点とも東京・有明の東京ビッグサイトで行われた「エコプロダクツ2008」で
自転車をみんなでシェアして使いませんか――。街頭に置かれた自転車を好きな時に使って、好きな場所で返す。そんなエコプロジェクトに、日本の商社などが外資とともに取り組んでいる。欧州の主要都市では一般的で、日本の自治体などにも導入の機運があるという。
三井物産と提携する米国の屋外広告大手クリアチャネル・アウトドアは、世界13都市で自転車共有サービスを展開している。そのサービスは、こんな仕組みだ。利用者は年間登録料(20ユーロ程度)を払ってカードを購入する。街頭に置かれた自転車ステーションにカードを入れれば、24時間365日、自転車を借りることができる。返却は別のステーションでもOK。バルセロナの場合、ステーションは市内400カ所、ほぼ200メートルおきに設置され、自転車は6000台あるといい、まさに日常の足代わりに使える感覚だ。
ステーションに屋外広告をつけることで設置費用をまかなうビジネスモデルで、自治体などの財政負担はないのが売り物だ。
同社と三井物産は合弁でクリアチャネル・ジャパンを設立。屋外広告事業を展開する中で、この自転車共有サービスを地方都市などに売り込んでいる。
一方、三菱商事はフランスの屋外広告大手JCドゥコーとの合弁でMCドゥコーを設立、同様の事業に取り組んでいる。JC社はパリで昨年7月から自転車共有サービスを開始した。市内1400カ所にステーションがあり、計2万台の自転車をどこでも借り受け、返却できる。料金は年間29ユーロ(1週間、1日などの料金設定もあり)で、1年間で2750万回の利用があったという。こちらも、ステーションに屋外広告を募集するビジネスモデルだ。現在、世界19都市でサービス展開しており、来年には62都市に拡大するという。日本法人も、自治体での導入に向けてスポンサー探しに動いている。
自転車の共有には、どんな利点があるのか。利用者は自転車を買わずに低額でレンタルでき、駐輪場所の確保や盗難の心配をしないで済む。放置自転車も減る。限られた資源の共有や、自動車から自転車へのシフトといった点で環境にやさしい。広告モデルなら自治体の財政も痛まない。両社の担当者はそう口をそろえるが、日本での普及はこれからだ。
「日本ではすでに個人所有の自転車が大量にある。一方で自転車専用道路は少なく、きちんとした運転ルールやマナーも整っていない」(MCドゥコーの担当者)というが、大量に消費され、駅前に放置される自転車を見ると、日本でも共有サービスを検討する時代になっているようだ。
(アサヒ・コム編集部)