コラム

MAJOR.JPとともに歩んだ6年間 <丹羽政善>

2008年12月31日

 MAJOR.JPのスタートは、2003年から。松井秀喜がピンストライプのユニホームに袖を通した年だった。その年、ヤンキースはワールドシリーズに進出したが、自分が担当したマリナーズはサイトが運営された6年間で、結局一度もポストシーズンに縁がなかった。

 振り返れば、それが寂しい。

 2003年、マリナーズにはまだシーズン116勝のメジャータイ記録を樹立した2001年の余韻があって、強かった。ただし、夏までは首位を走ったものの終盤に入って減速。93勝をマークしながら、前年に続いてプレーオフ進出を逃した。

 この年、佐々木主浩がわき腹の故障で戦列を離れた。リハビリを取材する過程では、3Aや1Aの球場へ。普段見られない野球に触れたこと――それはある意味、新鮮だった。

 2004年は、イチローが打ちまくった。年間262安打は、メジャーのシーズン最多安打。あれからもう、4年以上が経過したことに、少し驚きを覚える。

 記録達成前はとにかく忙しく、達成当日は翌日の明け方になってようやくベッドに潜り込んだことを思い出す。精神的にも体力的にもきつかったが、あの充実感は今も忘れられない。

 2005年は、チームとしても日本人選手としても、話題が少なかった。この年からマイク・ハーグローブ監督が指揮を執ったものの、チームは連続最下位。シーズン後には、2002年からマリナーズに在籍し、2003年には佐々木不在の間にクローザーとなって16セーブをマークした長谷川滋利がユニホームを脱いだ。

 シーズン最後の囲み会見――。彼は、何かを言おうとして口をつぐみ、そのまま会見を終えた。口に出せぬ激しい悔しさが、そこにはにじんでいた。

 城島健司がマリナーズに入団したのは、2006年。

 チームが変わろうとしていた。過去2年はシーズン序盤でプレーオフ争いから脱落したが、夏場まで持ちこたえる。8月中旬の遠征で全敗を喫して5年振りのポストシーズン進出は消えたが、久々に明るい兆しを感じた。

 2007年、前年の流れを引き継ぎ、8月には一時、貯金20を記録。ただ、これがピークだった。最後はエンゼルスに引き離され、再びシーズンは9月で終わった。

 昨季のシーズン前、エリク・ビダードを獲得して、プレイーフを狙う戦力が整ったと評価された。しかし現実には、あのトレードがチーム崩壊の象徴となり、今季も早々とプレーオフ争いから脱落している。

 悲喜こもごもを見てきた。そのいくつか。

 2003年か、2004年のこと。ある試合でエディー・グアダードが抑えに出てきたが、ブレット・ブーンの失策をきっかけに逆転を許した。試合後、ブーンはグアダードに「俺の責任だ」と頭を下げた。しかしグアダードは「いや、俺の責任だ」と一歩も引かない。2人はにらみ合いながら、自分の責任だと言い張った。

 2006年の4月。そのグアダードは、出るたびに打たれた。セーフコ・フィールドのクラブハウスからグラウンドに続く廊下で、あの彼が珍しく下を向いて言った。

「何を投げても打たれるような気がする」

 やがて、彼はJ.J.プッツにクローザーを譲る。起用が不規則になると、グアダードは監督室のドアをノックした。

 このとき、机を挟んで対峙したハーグローブ前監督は、驚くべきことを発したと言う。

「もう、お互いにいいじゃないか」

 これは、もう後は互いにお金だけをもらえばいいじゃないか、ということだったらしい。勝つことを諦めた指揮官に背を向け、グアダードはトレードを志願。レッズに移籍した。

 イチローが262安打に到達した夜、クラブハウスは優勝したかのような騒ぎとなった。頭からシャンパンやビールを浴びたイチローは、ミゲル・オリボと踊った。

 そのオリボは翌シーズン途中にパドレスへ。そこで彼はマリナーズの不満を漏らす。大塚晶則の取材に行ったのだが、アウェーのロッカーが隣りだったオリボが、マリナーズのトップを痛烈に批判した。

 彼の獲得も、ビル・バベシ前GMが仕掛けた失敗トレードのひとつと言われるが、フロントの迷走によって自分の居場所をなくした、悲しい選手の一人でもあった。

 さて、エピソードを紹介し始めたらきりがない。スポーツメディアとしては、ある意味実験的なサイトが、間もなく閉鎖する。それなりの意義はあったと思うけれど、これも時代の流れか。

 最後に、長い間読んでいただいた読者の方に、一言お礼を言いたい。

 本当にありがとうございました。そして、よいお年を。

2008年12月31日 丹羽政善

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