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2008年12月31日

◎北陸の雇用悪化 官民一体でしのぐほかない

 不況の風が吹き荒れ、雇用危機が深刻化する中での年越しである。北陸では全国を上回 るペースで非正規労働者の失業が増えてきた。景気の底が見えず、経営環境が悪化する深刻な状況では、企業だけに雇用の責任を押しつけられない。国も自治体も労使も知恵を絞り、この苦境を官民一体でしのぐほかないだろう。

 景気の急速な後退で、働く人の三人に一人が非正規となった就業構造の負の部分が一気 に表面化した。雇用形態のバランスを是正すべきか、それとも処遇改善や安全網の整備で対応すべきか。働き方の変化は少子化にも影響し、さまざまな視点から問い直す必要がある。法整備を含め、来年に持ち越した大きな宿題である。

 厚生労働省の調査では、十月から来年三月までの非正規の失業は約八万五千人に上り、 十一月末の前回調査から二・八倍に急増した。企業の減産が進み、失業者の一層の増加は避けられないだろう。今後は正社員に及ぶ可能性もある。石川県の非正規失業者は約千八百人、富山県は約千八百二十人と見込まれ、前回調査からそれぞれ五・二倍、二・八倍となった。

 富山県では二百人を超える臨時雇用、金沢市、小松市なども相次いで直接雇用に乗り出 した。緊急避難的な雇用の受け皿として自治体の役割が高まっているが、不要な仕事を無理につくらず、必要な事業の前倒しなど工夫が求められる局面である。

 自治体が臨時的な仕事をつくる緊急雇用対策は一九九九年にも実施されたが、当時とは 事情が大きく異なる。失業に占める非正規の割合が増え、再就職だけでなく、住宅の手当てなど、より手厚い支援が必要となる。

 非正規の場合、同一産業で仕事がなくなれば再就職は簡単ではない。富山県は来年二月 から非正規の失業者を対象にした短期の職業訓練に乗り出すが、行政としては技能を少しでも身につけさせる取り組みが大事である。

 製造業の中には中途解雇を撤回した企業もある。この機会をとらえ、人材確保へ積極的 に動く企業も出てきた。公的雇用には当然ながら限界がある。企業にもできうる限りの努力を望みたい。

◎ノロウイルス流行 手洗い徹底で乗り切ろう

 ノロウイルスによる感染性胃腸炎の集団感染が十二月に入って全国各地で報告され、石 川県は二十五日に「流行期」入りを発表し、富山県でもノロウイルスの食中毒が発生した。

 流行は例年より遅めだが、これから猛威を振るう恐れがある。高齢者施設や保育所、学 校、食品を取り扱う施設などにとっては危機管理が問われる時期である。新型インフルエンザに限らず、ウイルス感染対策のかぎを握るのは組織的な対応である。手洗いの励行や食品の十分な加熱処理などで予防策を徹底したい。

 ノロウイルスは貝類の生食による食中毒が多いと言われてきたが、嘔吐(おうと)物や 便などを介して広がる人から人への感染が大きな割合を占めることが分かってきた。主な症状は嘔吐や下痢、発熱だが、体力の衰えた高齢者や子どもは重症化する恐れがある。ウイルスの培養が難しいため詳しいメカ二ズムは未解明で、効果的な薬剤も開発されていないのが現状である。

 北陸でも過去にノロウイルス感染による死亡例があり、二〇〇六年末から〇七年初めに かけての大流行では、金沢市学校給食中央共同調理場で職員十八人が感染して給食が二週間ストップしたほか、高齢者施設が出入り禁止になるなど対応に追われた。

 集団感染が発生した高齢者施設で拭き取り調査をすると、トイレの便座やドアノブ、手 すりなどで大量のウイルスが確認される。患者が発生すると、たちまち施設全体が汚染される感染力の強さが特徴である。嘔吐物や便を通じて大量のウイルスが排出されるため、施設ではそれらの適切な処理が何より重要となる。

 予防の基本は手洗いの徹底である。ノロウイルスは細菌より小さく、手のしわにも深く 入り込みやすい。手を洗ったつもりでも意外と洗い残しが多いという。指先や爪先、親指は念入りに洗浄したい。

 「おなかにくる風邪」と思いこみ、感染対策を怠れば瞬く間に健康被害が広がる可能性 がある。ノロウイルスへの理解はまだ十分とは言い難く、行政は啓発活動をさらに強化する必要がある。


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