在留邦人向け安全の手引き


在外公館がまとめた安全の手引きです。海外の在留邦人が、事件や事故に巻き込まれないために留意すべき事項の他、(必要に応じて)戦争、暴動等の緊急事態への備えと緊急時の対処方法が記載されています。

安全の手引き

(長期滞在者の手引き別冊)

平成20年4月1日
在スウェーデン日本国大使館



目次

I.はじめに

II.防犯の手引き
 1.治安情勢
 2.日本人の被害例とその対策
 3.その他注意を要する犯罪
 4.特に注意を要する場所
 5.交通事情と事故対策
 6.緊急連絡先

III.緊急事態対処マニュアル

IV.おわりに

 

I.はじめに

 スウェーデンでは、これまで日本人が対象となった凶悪犯罪はほとんどありませんでしたが、犯罪件数は年々増加傾向にあり、過信は禁物です。
 スウェーデンに滞在されている皆様が、安全に、楽しく生活できますよう、この手引きを執筆いたしましたので、御参考にしていただければ幸いです。

 

II.防犯の手引き

1.治安情勢

 スウェーデンの2006年の統計によれば、犯罪として認知された記録だけでも、約124万件の犯罪が報告されています。統計のとり方は国ごとに相違があり、単純比較はできないものの、人口比約13倍の日本の犯罪件数(刑法犯)が、約370万件(2006年)ですから、スウェーデンの犯罪発生率は日本の5倍以上に及びます。スウェーデンにおける犯罪の過半数を窃盗等の財産犯が占めていますが、近年暴力犯罪の増加も目立ってきています。
 平成18年中にパスポートの盗難や紛失で当館を訪れた日本人は33人いました。一見少ない数字ですが、大使館に報告のないパスポート以外の金銭等の盗難件数は、かなりの数に上るとみられます。
 空港を拠点としていた窃盗団の話によると、多くの日本人のカバンには多額の現金や高価な電子機器が入っており、主なターゲットになっているとのことです。

2006年の主要な犯罪件数
○窃盗 約 615,400件
○詐欺 約  51,600件
○暴行・傷害 約  72,600件
○麻薬、法違反 約  51,800件
○強盗 約  9,400件
○強姦 約  3,800件

2.日本人の被害例とその対策

(1) 置き引き
被害例1
 ある有名ホテルでのビュッフェスタイルの朝食時、グループで旅行に来ていたAさんは、友人3人と朝食をとっていました。友人が同じテーブルに座っていたので、安心して椅子の下に自分のバッグを置いて食べものを取りに行き、戻ってみるとバッグは無くなっていました。すぐそばに座っていた友人もバッグを盗られたことには全く気付いていませんでした。
貴重品は体から離さない。
テーブル、椅子又は床にバッグを置いたまま食事を取りに行かない。
有名ホテルだからといって安心しない。

被害例2
 休暇シーズンで混雑しているアーランダ空港において、出張で海外に出かけるために搭乗手続きを待っていたBさんは、あまりの混雑のため出発に遅れてしまいました。そこで、バッグを足下に置いて電話で相手方にその事情を説明していました。電話が終わって気が付くと、もうそこにはバッグはありませんでした。
休暇シーズンで混雑が予想される場合は、十分な余裕をもって空港等に到着するよう心掛ける。
電話等で荷物を床に置く場合は、しっかりと荷物を足で挟む等の処置をする。(ホテルでのチェックイン・アウト時も同様。)

被害例3
 フェリーで、ヘルシンキからストックホルムに移動をしようとしていたCさんは、眺めの良いデッキに座席が残っているのを見つけ、席を確保しようとして椅子の上にバッグを置いて友人を呼びに行きました。そして友人を連れて戻ってみるとバッグは無くなっていました。
日本と違い、席に荷物を置いてその場からいなくなると、かなりの確率で荷物を取られます。列車内でも同様です。

(2) マヨネーズかけ泥棒
被害例4
 あるホテルでのチェックアウトが終わり、Dさんはラウンジでコーヒーを飲んでいました。すると男が近寄ってきて、背中にマヨネーズが付いていると注意してきました。「ご親切にありがとうございます」とDさんはお礼を言って、上着を脱いでマヨネーズを拭きました。拭き終わって気が付いてみるとDさんのバッグは無くなり、男も消えていました。
マヨネーズの他、ケチャップやアイスクリームなどを付けられる場合もありますし、上着だけでなくリュックサックやバッグにかけられるケースもあります。このような時はあわてずに、荷物に注意し、周囲に気を配りながら落ち着いて拭く等の処置をしてください。

(3) スリ
被害例5
 ガムラ・スタンでショッピングをしようとして、Eさんは友人とある土産物屋に入りました。混雑している店の中で品物を見ていると、後ろから男が同じ商品を見るような素振りでそばに来ていました。土産物を選び終わり、ハンドバッグから財布を出そうとしたところ、閉まっていたはずのハンドバッグの口は既に開いていて、中の財布とパスポートが無くなっていました。
ガムラ・スタン地区やドロットニングガータン、中央駅など混雑する地域で発生しています。時々振り返るだけでも予防効果があります。
後ろから抜き取られやすいところに貴重品を入れない様にしてください。

(4) 強盗
被害例6
 宿泊中のホテルの部屋で、ノックに応じてドアを開けたところ、いきなり顔面を殴られ、意識が朦朧としているうちに現金等を強奪されました。
ホテル滞在中の身に覚えのない訪問は無視する。
エレベータ等で乗り合わせた人が同じフロアーで降りた場合、用心した方がよいでしょう。
有名ホテルだからといって安心しない。

(5) 話しかけ泥棒
被害例7
 中央駅で、Fさんは友人がトイレに行ったので、友人と自分の荷物を監視していました。そこへ男が何やら訳の分らない言葉で熱心に話しかけてきたため、Fさんはそちらに気をとられました。男が去った後荷物を確認したところ、友人の最も大切なバッグが一つなくなっていました。
見知らぬ人から話し掛けられても決して注意を怠らない。通常、一人が話し掛けているすきに他の仲間が盗んでいきます。

(6) ニセ警察官
被害例 8
 ガムラ・スタンを歩いていると旅行者風の男が近づいてきて、写真を撮ってくれないかといってカメラを渡してきました。写真を撮った後、カメラを返そうとしても受け取ろうとせず、話し込み始めました。そうしているうちに警察官(私服)と称する二人組が現れ、「そこで何をやっている。麻薬の取り引きか?」などと尋問を始めました。麻薬を財布に隠していないか確認するので見せて欲しいとの要求に応じ提出したところ、そのまま財布を持って逃げられました。
路上で警察の尋問を受けることは通常ありませんし、まして財布の中を見せろということなどあり得ませんので、まず疑ってかかった方が無難です。
もし疑わしい者に遭遇した場合、警察官にID提示を求めるなどして対処してください。絶対に財布や荷物等を渡すことなく、頑なな態度で応じてください。
警察官の服装をしている場合もありますので注意してください。

(7) 車上荒らし
被害例9
 友人宅を訪問していたGさんは、車を20mほど離れた路上に駐車し、庭で立ち話をしていました。すると突然ものすごい音がして、直後に車の警報装置が鳴り始めました。驚いて走っていくと車の窓ガラスが割られ、中においてあったGさんのバッグは無くなっていました。
車から離れるときは、バッグ等を外から目に付くところに置かない。
短時間の駐車でもロックを忘れない。
カーナビや携帯音楽プレーヤー等、高価な電子機器は車を離れるたびに取り外す。

(8) 侵入盗(空き巣)
被害例10
 Hさんが、イースター休暇の旅行から家に帰るとなぜか玄関の内側から鎖の鍵がかかっていました。不審に思い裏口から中に入ると、既に空き巣に入られた後でした。
基本的に留守であることがわからないようにする。
・タイマー付照明装置の利用
・郵便物が溜まらないよう、大家や隣近所の人に定期的に回収してもらう。
アラームの取り付け(警備会社との契約)

3.その他注意を要する犯罪

(1) 性犯罪
 強姦件数は年々増加傾向にあり、毎年、過去最高を更新しています。日本人が被害にあった例もあり、女性の深夜の外出、帰宅の際にはできるだけ交通量の多い明るい道路を選択し、暗がりでの一人歩きは極力避けるようにしてください。強姦以外にも強盗やひったくりの危険性もあります。

(2) 買春罪
 1999年1月に成立した買春禁止条例により、買春側の罪が問われるようになりました。スウェーデンでは買春、児童ポルノ等については、大変厳しく取り締まられています。

(3) 飲酒運転
 2005年の飲酒運転の件数は23,200件で増加傾向にあります。飲酒運転取締りの基準となる血中アルコール濃度は日本より厳しく、呼気1リットルにつき0.1mg以上です。なお、現地ではライトビール1杯程度なら問題ないと言われていますが、全く根拠がありませんので、くれぐれも注意してください。


4.特に注意を要する場所

 ホテルのレストラン、空港等、旅行者の集まる場所で被害が多く発生しています。詳細は、在スウェーデン日本国大使館ホームページ( http://www.se.emb-japan.go.jp/nihongo/ )の「長期滞在者の手引き」を御参照ください。



5.交通事情と事故対策

(1) 全般的にスウェーデンの運転マナーは良好です。

(2) 鹿やエルクの飛び出しによる事故が多いので気を付けましょう。鹿をはねても罪にはなりませんが、警察へ報告する義務がありますので警察官の指示に従ってください。

(3) 学校の近辺は30km/hに制限されており、厳しく取り締まられています。標識をよく見て安全運転を心掛けてください。

(4) 事故に遭った場合は、あわてずに警察に連絡してください。


6.緊急連絡先

(1) 警察・消防・救急車:112

(2) 病院・薬局等:「長期滞在者の手引き」を御参照ください。

(3) 在スウェーデン日本国大使館:08-579 353 00 (閉館時間、休館日には留守番電話となっていますが、緊急の際にはメッセージの内容に従って連絡してください。)


III.緊急事態対処マニュアル

1.平素の準備と心構え

(1) 在留届の連絡先又は緊急連絡先に変更が生じた場合は、速やかに在スウェーデン日本国大使館まで御連絡ください。

(2) 近隣のシェルターの位置をコミューンに問い合わせて、御確認ください。

(3) 暴力的なデモ行進も発生していますので、テレビや新聞等で日常的に情報収集を行ってください。

(4) 警報サイレンの種類について確認しておきましょう。(「長期滞在者の手引き」を御参照ください。)

(5) 常に非常用の食料等を確保しておきましょう。


2.緊急時の行動

(1) まず在スウェーデン日本国大使館に御連絡願います。事件によっては、安否確認のため大使館側から連絡する場合もあります。

(2) 基本的に現地当局等の指示に従い避難してください。また、避難先から在スウェーデン日本国大使館に安否について御連絡いただければ、御家族等にお伝えすることができます。

(3) 緊急事態発生の蓋然性が高まった場合、状況にもよりますが、基本的に在留邦人の方は外出を控え、短期滞在者の方はホテル等で待機し、次の行動に備えてください。

(4) 国外退避が必要であると判断される場合、まず航空券の予約をしてください。一般の航空機等による退避が困難と予想されるときは、大使館が主体となりチャーター機等の契約について検討します。


3.緊急事態に備えてのチェックリスト

( i ) 非常用の水・食料・医薬品・燃料等の準備(10日分以上が望ましい)
( ii ) シェルターの位置確認
( iii ) 緊急連絡先確認
( iv ) 現金・パスポートの準備
( v ) 航空券の手配又は仮予約


IV.おわりに

 テロリズムは、今や世界中のどこでも起こり得るものです。また、航空機事故等の大規模事故は、国の安全性とは無関係に発生するものです。幸いなことにスウェーデンでこれらの事件・事故等は極めてまれですが、これまでの安全は、これからの安全を保証するものではありません。万一に備え、自分の身を自分で守るために、できるだけの準備をしておくべきです。緊急事態が発生した場合、在スウェーデン日本国大使館はあらゆる手段を尽くして、日本人の生命や財産の保護に努める所存です。
 また、日常生活における一般犯罪には、十分にお気を付けください。また、ささいな事件でも在スウェーデン日本国大使館領事部連絡いただければ幸甚です。

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