トップ > 東京 > 12月30日の記事一覧 > 記事
【東京】池袋からの一掃なるか 改正都迷惑防止条例 居酒屋への客引きに初適用2008年12月30日
「お客さん、鍋いかがですか」−。今冬、池袋で通行人を執拗(しつよう)に客引きしたとして、居酒屋の店長ら二人が都迷惑防止条例違反の疑いで、警視庁に逮捕された。四月に改正された同条例の規定を居酒屋への客引きに適用したのは初めてで、地元商店主らは「安心して歩ける街になった」と喜ぶ。改正条例は、東京の繁華街から客引きを減らす歯止めとなるか。 (安藤恭子) 十一月二十四日夜、JR池袋駅西口を歩いていた私服警察官の前に、居酒屋のメニューを持ったアルバイトの大学院生(24)が立ちふさがった。「邪魔だよ」と言われても、「店はすぐそこ。20%オフにしますから」などと、約七十五メートルつきまとったところで現行犯逮捕となった。 共犯として逮捕された元店長(26)は、池袋署の調べに、「ノルマが厳しく、従業員にハッパをかけた」と供述。二人は処分保留で釈放された。客引きの成功報酬は客一人につき、五十円だった。 条例改正後、スーツ姿でキャバクラへのスカウトを行う「カラス族」の摘発が相次いだ池袋一帯。商店主らによる「池袋西口駅前環境浄化推進委員会」の加藤竹司さん(66)は、「居酒屋の客引きなら捕まらないと、たかをくくっていた連中もいなくなった」と、今回の逮捕を歓迎する。 客引きの実態を知ろうと、忘年会客らでにぎわう十二月末の夜、同委員会の歳末パトロールに同行した。 十数人のパトロール隊は間もなく、デパート前の柱の陰で、鋭い目つきのロングコートの男に出くわした。「待ち合わせ?」。加藤さんがけん制すると、小さくうなずき肩をすくめた。「あれは風俗店の客引き。一人は逃げた」と加藤さん。 近くの路地には居酒屋のチラシを持つ男性。「店の前でやってよ」と注意され、「目の前だからいいやと思って」と頭をかいた。一メートル四方の看板を掲げた整体店の女性は、パトロール隊を見て、慌てて看板を片付けた。 一方、「お客さんが歩きやすくなった」と喜ぶのは、居酒屋チェーン店の男性店員。看板の電気コンセントを抜かれたり、入店しようとする客を奪われたりと、営業妨害をされてきただけに「この静けさが続いてほしい」と願う。 警視庁の捜査幹部によると、条例改正後、都内の客引きの検挙件数は増加。「強引な客引きは減ってきているようだ」と指摘する。 だが、午後九時すぎにパトロールが終わると、いったん姿を消した客引きたちが、メニューや看板を手に路上に戻る姿も見られた。以前客引きをしていた店の男性は、「ビルの上層階などだと、営業は厳しい。警戒をくぐって客引きは戻ってくる」と話す。 池袋署には迷惑な客引きについて、毎月二十−三十件の通報が寄せられてきた。「店の責任も問わないと、結局いたちごっこ」と金井貴義副署長。逮捕された二人の居酒屋の運営会社も、同容疑で書類送検する方針だ。 <都迷惑防止条例の改正> 迷惑な客引きの横行を受け、4月の改正条例施行で身体や衣服をつかむといった従来の規定に加えて、「立ちふさがり」「つきまとい」による執拗な客引き行為を禁じる規制を設けた。また通行中の女性をキャバクラへ勧誘するスカウト行為も規制対象となった。
|