WEBタイムス 2006年(平成18年)10月27日940号
 社会・福祉

ひろしまドッグぱーくで譲渡会 イヌたちが新たな飼い主の元へ

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イヌの保護が続くひろしまドックぱーく
 【佐伯区】広島市佐伯区湯来町の旧「ひろしまドッグぱーく」で約五百頭のイヌがエサなどをほとんど与えられず極度の衰弱状態にあった問題で、施設を管理していたドッグプロダクションからイヌたちの所有権を譲り受け、救済に取り組んでいる動物愛護団体のアーク・エンジェルズ(林俊彦代表、大阪府大阪市)が21日・22日の両日、イヌの譲渡会を開いた。全国各地から数多くの引き取り希望者が来場し、アーク・エンジェルズは二日間で三百十九匹のイヌを譲り渡した。
 ひろしまドッグぱーくは、二〇〇三(平成十五)年に開園したイヌのテーマパーク。来園者たちはイヌと触れ合うことができ、ドッグレースなども催していた。園を所有していた会社によると、実際の管理は同プロダクションがしていたという。〇五年に経営不振で閉園したが、同プロダクションは同所でイヌを管理し続けた。五百頭近いイヌが不衛生な狭いケージに閉じ込められ、エサを与えられていなかった。
 近隣住民や、県内の動物愛護家らが園の惨状に気付き、同年6月ごろから同プロダクションに改善を求めるなどして活動していた。
 広島市動物管理センターは今年9月までに現地調査を五回実施。「二十回以上にわたり口頭指導をしたが、ドッグプロダクションは犬舎のある特定の施設への立ち入りを拒否するなどし、飼育環境の改善を図ることはなかった」と言う。
 アーク・エンジェルズは今年9月に園の実態を知り、同プロダクションの主催した園内のイヌの譲渡会に来場した。約二十匹のイヌを連れ帰り、動物病院に診察を依頼したところ、獣医は「虐待に当たる」と判断。同26日、広島西署らと共に同園へ立ち入り検査した。同日、アーク・エンジェルズはイヌの手当てと施設の管理をするようになった。イヌのレスキューに協力しようと、同団体のメンバー以外にも、多くの人たちがボランティアスタッフとして同所に集まった。平日でも約二百人のスタッフがボランティア活動に取り組んだ。
 「初めて足を踏み入れた時の園の光景は地獄のようだった」とアーク・エンジェルズの関係者は振り返る。骨が浮き出るほどやせ細り、皮膚病など感染病にかかっているイヌも少なくなかった。何とかして外へ出ようと、ケージにはイヌたちが何度もかみついた形跡があった。10月6日には施設内展望台付近で、地中に埋められていた数十匹のイヌの死骸が発見されたという。
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譲渡会で多くのイヌの引き取り手が決まった
 21日の譲渡会には、早朝から引き取り希望者が詰めかけた。来場者らは施設内のイヌを見て回り、ボランティアスタッフと話をしながらどのイヌを引き取るか考えていた。希望するイヌが決まると、アンケート用紙を記入し面談を受け、仮契約を交わしてイヌを譲り受けた。飼い主はイヌを家に持ち帰り、避妊・去勢手術などをして獣医の診断書をアーク・エンジェルズに送付し、はじめて正式な契約になるという。イヌを譲り受けた後は県獣医師会の会員らが皮膚病治療のための注射などをしていた。
 21日には来場者の人数が多く、当初の予定とは異なり、入場受付を午後2時で締め切った。「終生、イヌの飼育をすることは可能か」、「避妊・去勢手術ができるか」、「引き渡し後の飼育環境は十分整っているか」などの譲渡条件をクリアできず、すぐにはイヌを引き取ることができないまま同所を後にする人たちもいた。
 同所で三回、ボランティア活動に参加した同市安佐北区の中野伸子さんはコーギーを引き取った。「初めてボランティアとして働いたころは、この子(コーギー)はしっぽも振らなかったし、無表情だった。散歩で外に出るのも嫌がったけど、ほかのイヌと同じように、今ではだいぶん回復している」と感慨深そうに話していた。
 来場者たちは、イヌを引き取った人とすれ違うとあいさつを交わし、イヌに向かって「良かったね」、「幸せになってね」と語り掛けていた。
 アーク・エンジェルズの林代表は、「この子たち(の健康状態)は普通の状態ではない。今まで苦しい経験をしてきたのだから、引き取った人は心からかわいがって、世話をしっかりしてあげてほしい」と話していた。
 アーク・エンジェルズは、園の元経営管理者を動物愛護管理法違反の容疑で告発する方針。
 現在、残っているイヌは約百九十匹。随時、譲渡している。引き取りたい人は電話して、面談の日時を決める。
 問い合わせは、アーク・エンジェルズ広島支部TEL(0829)86・1222。


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