ガザ地区:多数の負傷者であふれかえる医療施設
2008年12月30日掲載
パレスチナ自治区のガザ地区で活動している国境なき医師団(MSF)は、同地区にある二つの主要な病院に対し、医薬品と医療物資を提供した。またMSFは、多数の負傷者であふれかえる医療施設の混乱を緩和するため、29日より負傷者の治療を開始する。
12月27日以降、ガザ地区への空爆により、一般市民を含む300人が死亡し、1,000人以上が負傷したとみられている。国境なき医師団(MSF)のチームは27日、ガザ地区北部に位置するケマル・エドワン病院とシファ病院を中心とした、地区内の主要な医療施設におけるニーズを調査した。これらはガザ地区の中核病院で、医薬品と医療物資が急速に不足することが懸念されている。MSFは27日から28日にかけて、包帯、消毒剤、抗生物質を中心とする、負傷および火傷治療のための物資を提供した。これらの物資は、MSFがガザ地区に設けている緊急用の医薬品および医療品の備蓄から提供された。
ケマル・エドワン病院およびシファ病院では、大勢の負傷者の受け入れで職員は忙殺されており、患者を治療するための場所も不足している。MSFのチームは、28日にはガザ地区内で移動することがまったくできなかったが、29日にはパレスチナ人スタッフが、地区内で運営している診療所に赴くことができた。このチームは、ガザ地区の中心部にまで空爆が広がっているなか、状況が許す範囲で負傷者の治療を開始する予定である。一方、MSFチームがケマル・エドワン病院の近くで運営している小児科専門の診療所に行くことは不可能であった。
また、医師2人と看護師1人からなる別のチームは、シファ病院で負傷者のトリアージ(重症度、緊急度などによって治療の優先順位を決め、患者のふるいわけをすること)にあたっており、救急車を用いたMSFの診療所への患者の搬送も行っている。チームの残りのメンバーは、ニーズの把握とそれに応じた活動内容の調整を継続していく。
国境なき医師団(MSF)は2007年7月よりガザ地区で、紛争により負傷した何百人もの患者に対し、術後ケアおよび理学療法を提供している。2008年3月には、同じくガザ地区内に、12才以下の子どもを対象とした小児科専門の診療所を開設した。MSFはヨルダン川西岸地区でも、暴力にさらされている人びとに対し、医療および心理・社会ケアを提供している。
現在パレスチナ自治区では、11人の海外派遣スタッフと108人の現地スタッフが活動に従事している。MSFは、1989年よりパレスチナ自治区での活動を継続している。
関連ニュース
- 2008年12月30日
- ガザ地区:多数の負傷者であふれかえる医療施設
- 2008年11月12日
- パレスチナ自治区:「もはや、希望もない状態です」
- 2008年9月17日
- パレスチナ・ガザ地区:医療よりも政治が優先されるのか?
- 2008年4月28日
- ガザ地区:MSF、燃料危機で医療援助活動の縮小を余儀なくされる −経済封鎖が人道医療活動にもたらす影響を非難−
- 2008年3月21日
- ガザ地区:MSFの活動 -3月13日現在-