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2008年12月30日

◎地震被災者の慰労 息長く続けたい「心のケア」

 能登半島地震の被災者が暮らす輪島市の仮設住宅に、阪神大震災で甚大な被害を受けた 神戸市民から、もちやクリスマスプレゼントが届けられるなど、県内外からの善意が高齢の被災者らを慰め、元気づけている。仮設住宅の入居者は来春には二年間の入居期限が切れることになり、新たな住まいでの再出発に決意を固めている。ただ、地震で受けた「心の傷」は長引く心配があり、とりわけ年老いた被災者を精神的に支えるケア活動を息長く続けることが求められる。

 輪島市の仮設住宅に贈られたもちは、神戸市長田区の住民が新潟県中越地震の被災地・ 旧山古志村産のコメを使って作った。被災地同士の連携を象徴するもので、震災を通じて結ばれた絆を今後も大切にしたい。末永い交流活動は地域振興にも役立とう。

 能登半島地震の発生から約五カ月後に金大チームが行った調査では、仮設住宅に入居す る高齢者のうち、近所付き合いや家族との交流の少ない人に、不安や緊張などPTSD(心的外傷後ストレス障害)のような心の被害を訴える傾向が強かったという。

 このため県や自治体は、仮設住宅に「心のケアハウス」を設けるなどして被災者の心身 の健康維持に努めてきた。保健師が健康相談などに応じるケアハウスは入居者の交流拠点となっており、そこでの温かい交わり、励まし合いによって気持ちを再び前向きにできたお年寄りが少なくない。

 現在、輪島市など四市町の仮設住宅に入居している百五十二世帯は、来年四月末までに 新築の自宅のほか災害公営住宅や民間アパートなどに転居する考えという。生活再建の場の確保にメドが立ったことになるが、気がかりは被災者の「心の再建」になお時間がかかる恐れがあることだ。

 中越地震の事後調査では、特に高齢の被災者の心の傷は治りにくく、三年経っても抑う つ感や無力感が続いたとの報告がなされている。輪島市などの仮設住宅の入居者が来春退去すれば、ケアハウスの役割も終えることになるが、保健師らによる定期的なケア活動はなお継続する必要があろう。

◎減らぬ食品偽装 JAS法の罰則強化を

 食品偽装の摘発に歯止めがかからず、悪質業者が一向に減らない。今年度、国ないし都 道府県が日本農林規格(JAS)法に基づいて改善を指示・命令した件数は既に八十三件に上り、前年度を上回るペースである。現行のJAS法は、最高一億円の罰金を科すことも可能だが、処罰までに段階を踏む必要があり、一度も適用されたことがない。

 以前は、企業名を公表することが偽装の抑止効果になると考えられていたが、偽装は減 るどころか、拡大の一途である。企業名の公表がもはや抑止力にならないのは明白であり、即座に罰金を科すことができるようJAS法違反の罰則を強化してほしい。

 今年も中国製冷凍ギョーザへの殺虫剤混入やウナギの産地偽装などで、食の安心・安全 は大きく揺らいだ。農林水産省は今月、食品メーカーなど約百八十の業界団体に対してコンプライアンス(法令順守)の徹底を呼び掛ける通知を出した。似たような通知を繰り返し出さなければならないほど、偽装の手口は悪質、巧妙化している。食品偽装に対する社会的関心が高まっているのに、悪質業者は一向に減らないのである。

 農林水産省は食品の表示偽装で改善を指示した事業者名を例外なしに公表する方針を決 めた。都道府県の判断で非公表とする不公平な事例を防ぐためであり、運用を一本化し、偽装の防止を図るのは一歩前進だろう。

 しかし、偽装表示をしても、初回は改善指示だけ、二度目も改善命令だけというのでは 、いかにも甘すぎる。情状酌量の余地がある場合は別として、悪質なケースであっても注意処分で終わりと言うのでは、違反は無くならないだろう。三回目からは罰金や懲役刑が科せられるとはいえ、今までに罰金を払った企業は一社もないのである。

 JAS法違反の罰則強化は、農水省の権限を強めることから、食品業界への影響力をこ れまで以上に高める懸念もある。罰則強化とともに、農水省の「焼け太り」をさせぬ工夫がいることも指摘しておきたい。


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