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オシム氏、日本サッカーを語る

2008年12月16日11時4分

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写真笑顔でインタビューを受けるオシム氏=上嶋写す

 サッカー前日本代表監督のイビチャ・オシム氏(67)が朝日新聞社のインタビューに応じた。脳梗塞(こうそく)から回復し、5月に日本協会のアドバイザーに就任。日本協会からは12月末で切れる契約の更新を打診されたが、協会の方針変更で退任が決まった。日本サッカーへの思いなどを聞いた。(聞き手・上嶋紀雄)

 ――今の気持ちは。

 「空っぽになった感じだ。ただ、日本という立派な国で代表監督ができたのは名誉なこと。日本は生まれ故郷のボスニアに匹敵する大事な国。いい形で痕跡が残ればいいな、と思っている」

 ――十分に痕跡を残した。

 「努力はしたが、残っているかどうか。日本代表をコレクティブ(組織的)な集団にまとめようとした。いろんな個性があった上で、同じインスピレーション、同じアンビション(大志)、同じアイデアを持っている集団。でも時間が足りなかった」

 ――その代表がW杯予選を戦っている。

 「普通にやれば予選突破は当然のこと。私が半分ほど手がけたチーム、選手でもあるのだから、突破する実力を持っていると思っている。突破に失敗したら、指導した私にも責任がある。自分の実力を信じなさい、自信を持ちなさい、と私は言ってきている」

 ――代表への期待は。

 「予選を突破するだけでは十分ではない。さらに高い目標をたてるべきだ。(目標達成には)何かをやってやろうというアンビションが重要。W杯に行って負けた、勉強になったでは十分ではない。人生はずっと勉強だが、それだけではだめだ。W杯で日本がまた勉強に来たと見られるのではなく、何かをやりに来た、と世界中に抱かせて欲しい。すでに半分以上、予選突破の可能性があるので本番の準備を始めるべきでしょう」

 ――代表では、サイドバックの20歳の内田篤人(鹿島)ら若い選手が出てきている。

 「サイドバックで言うとまだ若手でいい選手はいる。中村北斗(福岡)や左利きの阿部翔平(名古屋)も入っておかしくない。今、代表にいる選手たちが完成された選手ではないということ。駒野友一(磐田)や加地亮(ガ大阪)もいる。現代サッカーではサイドからの攻撃がカギ。最強の左右は右が駒野、左が村井慎二(磐田)と考えたこともある。ただ守備力を向上しないといけない。攻撃力が大事だが、失点を防ぐために走って往復運動ができることが必要。ケーキで言えば攻撃力がクリームで守備力がイチゴ。イチゴもあるケーキがいい」

 ――Jリーグも含めた日本の課題は。

 「日本のサッカーはスピードを生かすこと、アジリティー(機敏性)を生かすこと、アグレッシブにやること、そういう方向で間違いない。ただ、プレッシャーを受けた状況での技術が十分ではない。フィジカル面、特にスタミナが足りない」

 「日本は欧州の一流のサッカーと大きな差はないと思うが、何が一番違うか。それは練習に取り組む姿勢がどれほど真剣かということ。欧州のビッグクラブの練習を見に行くといい。簡単そうに見える練習でも全力でやっている。練習を完璧(かんぺき)にできて初めて試合でいいプレーができる」

 「日本人の特性なのかもしれないが、誰かがこうすればいい、と言ってくれるのを待っているように見える。自分自身に責任を持つ、自分で決定を下す能力を身につけるべきだ。サッカーはそういうことを反映する。自分で責任を持ってプレーする、自分を頼る。それが私の日本へのメッセージです」

 ――北京五輪で惨敗するなど若手の育成が課題だ。

 「若い世代のセレクションをもっと工夫した方がいい。世界でどんなやり方をしているか参考にすべきだ。今の代表を見ても、左利きの選手、体の大きなFW、足の速いセンターバック、攻撃の起点になれるようなGKが少ない。それは今から5年前、10年前の年代別代表のセレクションがあまり成果をあげていないということです」

 ――ほかに助言は。

 「日本サッカーに対して、はっきり言える人が誰かいるべきだ。批判があって初めて前進する。例えばお店でおいしくないコーヒーを出されたとする。誰かがおいしいと言うと、次の日もお店の人はそのコーヒーを出す。本当のことを言うことが大切です」

 ――今後、日本とどんなかかわり方を。

 「今後も私はいつでも手伝う準備はできている。日本のクラブの指揮? オファーがあればその時に考える。ただもっと体を良くしなければいけない。こうして生きて話していることが奇跡だと言うお医者さんもいる。前のような仕事に就くことができたら奇跡の2乗ですね」

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