11月17日、SL信越120周年号の試運転で走るD51=長野県信濃町、高山顕治撮影
昭和の時代に「デゴイチ」の愛称で親しまれた蒸気機関車D51のうち、いまも唯一営業運転していた車両(JR東日本所有、1940年製造)が、ボイラーの「空だき」で走行不能になっている。管理ミスが原因の可能性がある。「修理には最大1年半」(JR関係者)とも言われ、今後のイベント運行は白紙となっている。
JR東日本によると、走行不能となったのは今月14日。宮城県美里町の車両基地で試験運転をするため、ボイラー内にある火室(かしつ)に石炭を入れて燃やしていた。しかし、ボイラー内の水量が少なく、火室の外壁の温度が330度以上に上昇。外壁の一部が熱で溶け、火室が壊れたという。
同社や鉄道博物館(さいたま市)によると、D51は1936(昭和11)年ごろから製造された。総生産両数は1115両と機関車の種類として最も多く、馬力も強かった。このため「蒸気機関車の代名詞的存在」として人気があった。旧国鉄では75年12月に定期運行を終えた。
国内で現在、動く状態で保存されているのは2両。だが、1両は梅小路蒸気機関車館(京都市)にあり、一般の線路を走っているのは今回故障した車両だけという。
火室が壊れたD51は今後、福島県郡山市にある車両基地で解体され、修理される。同社はボイラー内の水位の低下について、「水漏れの可能性がある」としている。JR関係者は「火入れした状態の時に水位が適切かどうかを点検することは基本」と管理ミスを指摘する。
このD51は故障後の20、21日には宮城と山形県で運行される予定だったが、別の機関車で代用した。来年2月中旬に千葉県内でも運行予定があるが、キャンセルの可能性が高い。
07年度には、東日本各地で観光キャンペーンなどの臨時列車として約50日間運行。乗務員の訓練などを合わせると運行日数は150日に上った。(峯俊一平)