重苦しい雰囲気に包まれた。10月8日早朝、福岡市のホテルの1室。アビスパ福岡の主要株主企業代表が、来季以降の支援策について話し合うため、極秘で朝食会を開いた。出席者からは、支援に懐疑的な意見が相次いだ。「特定の企業で支える理由は何なのか」「なぜサッカーなのか」
■何も決まらず
朝食会は、チームの後援会長を務める河部浩幸・福岡商工会議所会頭(九電工会長)が呼びかけた。「7社会」の幹部を中心に10人余りが集まった。
7社会‐。九州電力、九電工、西部ガス、福岡銀行、西日本シティ銀行、西日本鉄道、JR九州の地場大手7社でつくる親睦(しんぼく)団体だ。固い結束で知られ、さまざまな地域の事業を援助している。この日の出席企業は、広告費やチケットの購入で、今季のチーム収入の3分の1を支える。
冒頭、河部会長が支援の継続を要請。続いて、アビスパ福岡の都筑興社長が厳しい経営状況を説明し、理解を求めた。だが、河部会長の正面に座った出席者が「チームは何を目指しているのか」と口火を切ると、次々と不満が爆発した。
都筑社長の出身企業である九電の松尾新吾会長が「サッカーは福岡のステータス。(支援を)存続させるべきだ」ととりなし、場は収まったが、具体的には何も決まらなかった。
■度重なる支援
大口株主の不信の背景には、2006年4月の大幅減資がある。アビスパは、30億円を超える累積赤字の一掃のため、資本金約34億円の99%を減資して赤字の穴を埋めた。出資企業は「一から出直す」というアビスパの言葉を信じ、出資額のほぼ全額を失った。
しかし昨季をもってユニホームスポンサーが撤退。収入が激減し、アビスパは、どんなに経費を切り詰めても、今季は約1億円の赤字が出る見込みになった。
困り果てたアビスパが最終的に頼ったのが、大口株主たち。今年4月、7社会を中心とした主要11社に1000万円ずつ、計約1億円の追加支援を求めた。
だが大幅減資からわずか2年。7社会も、度重なる支援要請に反応は厳しかった。ある7社会幹部は「景気が急速に悪化する中、これ以上の支援は、われわれの株主の理解が得られない」とまゆをひそめた。
集まった支援額は約5000万円にとどまる。
■一握りで運営
7社会頼みから脱却するため、アビスパは今季新たに16社のスポンサーを得た。それでも総スポンサー数は72社。約700社に上るJ1・大分トリニータの10分の1にすぎない。
福岡県久山町の会社社長、河辺哲司さん(53)は、すそ野の広がりに乏しいアビスパの現状を複雑な思いで見つめている。
1993年、福岡青年会議所理事長(当時)として、プロサッカーチームの誘致のため、50万人の署名運動の先頭に立った。だが、誘致が成功すると、Jリーグブームの中、アビスパは、1握りの大手企業と福岡市中心で運営された。署名運動に奔走した中小経営者には、声がかからなかった。
そんな経緯もあり、10年以上スタジアムに足を運ばなかった。あれほど誘致に情熱を傾けながら、アビスパを支えてこなかったことを「ボタンの掛け違いがあった」という。そして「アビスパは今こそ、サッカーを愛する人たちが引っ張り、市民球団として出直すべきだ」と力を込めた。
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=2008/12/09付 西日本新聞朝刊=