そのファクス用紙を手にしたとき、目頭が熱くなった。
「ぼくたちのまち福岡 アビスパ大好き」
「大きくなったらアビスパのせん手になりたいです。アビスパがゆめあるチームになってください」
小学3年生の男の子が幼い文字でアビスパへの思いを鉛筆でつづっていた。
8日付紙面から始めた「どうするアビスパ」の連載。メールやファクス、手紙、電話で寄せられた読者の意見は500件を超えた。
■全国各地から声
私たちは問いたかった。九州初のJリーグクラブとして九州のサッカー界をリードするはずだったアビスパが、成績不振と財政難に陥り、福岡の町からも、その存在が薄れていく。このままでいいのだろうか-。
「福岡にはアビスパがある。そう誇れる希望あるクラブに変わってほしい」(福岡市東区の会社員男性)。「アビスパが私の生きがい。今こそ生まれ変わるときだ」(長崎市の女性)。「福岡と藤枝の思いを乗せた船を沈めるな!」(静岡県藤枝市の男性)「福岡という故郷の名前で声援できるクラブを何とか立て直そう!」(大阪市の会社員)…。九州だけでなく全国各地から予想を超える反応が届いた。
■フロントを批判
クラブの存在で生きる勇気をもらった人もいた。福岡市早良区の男性(53)は2005年にリストラされ、5カ月後に別の会社に就職できたが、不安を募らせていたという。「本当に仕事をやっていけるのか? そんなときアビスパの試合を見て感動し、博多の森のアビスパが精神的支柱になった。だからこそ夢あるクラブになってほしい」
アビスパ創設時からのファンで、同市中央区の飲食店で働く男性は昨年脳出血で倒れたが、今季もスタジアムに車いすで訪れたという。「僕のように体が不自由になっても応援する人もたくさんいる。その熱が伝わらない今の人たちに任せては、後退するだけだ。情熱ある人はいる。その人たちの力が必要」
フロントの批判や幹部の一掃を求める声が最も多かった。
■誘致した思いを
アビスパが前に進むためにはどうすればいいのか-。「これまで出資してくれた地元大手企業には感謝しているが、市民にも責任はある。本当の意味の市民球団となるべきだ」(福岡県太宰府市の会社員)「企業依存型から市民参加型のクラブになることが必要だ」(福岡市早良区の主婦)「福岡の子どもサッカー人口は多い。選手も地元出身中心に集めるべきだ」(福岡県志免町の男性)「市民の結集こそがクラブの本当の力になる」(福岡県篠栗町の女性)
読者の意見を目にするたび、本紙も日常紙面でアビスパをどれだけ支えてきたのか自問した。これから真の市民球団にするためには、われわれも含め市民が企業、行政とともにクラブ運営にかかわることを意味する。スタジアムに足を運ぶ。資金集めにも協力する必要に迫られることもある。苦しいときもあるが、それを乗り越えてこそ道筋は見えてくる。
忘れてはいけない。市民50万人の署名で静岡県藤枝市からチームを誘致したことを。読者の反応であのときの思いは消えていないと確信した。アビスパは必ず立ち直る。
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=2008/12/13付 西日本新聞朝刊=