「ナギが処女ではない」ということに業を煮やした一部のファンが『かんなぎ』掲載誌を切り裂いた画像をネット上に投稿するなどし、掲示板には「編集部に脅迫まがいの手紙を出した」「原作者・武梨えりの(公表されていない)自宅を調べ上げて直接抗議行動をした」など、嘘か本当か分からない過激な書き込みが相次いだのだ。さらに、武梨えりが入院し、コミックが休載になったことで騒ぎはさらに拡大した。
12月には『かんなぎ』掲載誌である『月刊コミックREX』(一迅社)が編集長の署名入りで「武梨先生の入院は事実であるが、誹謗中傷が原因ではない」という声明文を掲載。恐らくこの発表が事実なのであろうが、あまりにタイミングが合致してしまったために、いまだにこの騒動の余波は一部でくすぶっている。
こうしたアニメファンやコミックファンによるストーリーそのものへの抗議行動は、最近始まったものではないらしい。匿名を条件に、現役アニメ監督のA氏に話を聞いた。
「むしろ最近はおとなしいよね。ネット掲示板が"捌け口"になってるんだと思うよ。むかしは作品の中で男と女がくっついたらすぐに抗議の電話が殺到。鳴りやんだら小包で2人の絶縁を希望する署名が届いたりね」
そういった抗議に対しては、ほとんど無視するのが通例なのだという。
「最初からストーリーとして決まっていることだからね。こういう手紙を寄越すファンというのは、キャラクターばかりでストーリーの面白さを見てくれないんだよね。キャラクターそのものがアイドルになってしまっている」
また、手紙だけならまだしも、さらにエスカレートしてしまうファンも少なくないという。
「あるとき、スタジオに見知らぬ男性が急に入ってきてね、紙袋から我々が作っている作品のキャラクターフィギュアを取り出したんだよ。で、何を言うのかと思ったら『僕、○○ちゃんがこんなに好きなんです! だから○○ちゃんに会わせてください!』って......。すぐに守衛さんを呼んだよね」
だが、こうしたファンによる過剰な行動が見られるのは決してコミックやアニメ分野だけではない。先日、卓球日本代表の福原愛に熱愛報道が持ち上がった際には、卓球協会に「別れさせろ」という抗議電話が多数寄せられたとも聞く。アイドル歌手が次々に「出来ちゃった結婚」を発表するなど、芸能人に処女性を求めにくくなった昨今、「アイドルには処女であってほしい」と願うファン心理が様々なジャンルに波及しているとも言えるのかもしれない。
(原田孝一)
こちらは原作コミック
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