大手ゼネコン「鹿島」などがキヤノンの大規模工場建設プロジェクトで裏金をつくっていた問題で、裏金づくりのひとつのルートに関係していた電気設備工事大手「九電工」(福岡市)が、キヤノン会長で日本経団連の御手洗冨士夫会長の知人が経営する大分市のコンサルタント会社側に約5億円のコンサルタント料を支払っていたことが、関係者の話で分かった。キヤノン関係の工事をあっせんしてもらった謝礼の意味をこめて支払われたという。九電工は「個別の件には答えを差し控える」としている。
同社は、07年3月期までの3年間に、キヤノン関係の工事を請け負った鹿島や同社子会社から、少なくとも20件の電気工事などを下請けとして受注している。大分市のプリンターカートリッジ工場など大型プロジェクトばかりで、受注総額は200億円近くに上る。
このうちのひとつ「塚越プロジェクト」は、川崎市にプリンター研究開発施設を建設するもの。九電工が鹿島から電気工事を約9億3千万円で受注。このうちの一部の工事を、徳島市の電気工事会社を通じて最終的に兵庫県三田市の設計会社が下請けとして約2億円で請け負った。
これについて福岡国税局が調査したところ、実際に工事をしていたのは三田市の会社ではなく別の会社だったことが判明した。国税局は九電工の指示で架空外注費を計上して裏金をつくり、実際には受注工作費として使われたと判断。経費とは認められない交際費に当たるとして、九電工に約2億円の所得隠しを指摘した。
一方、鹿島も大分市のコンサル会社に対して04年から05年にかけて、計約4億円のコンサル料を支払っている。大分市の二つのデジタルカメラの工場の建設工事をあっせんしてもらった謝礼の意味が含まれていたとみられる。この工場建設工事のキヤノンから鹿島への発注額は計約210億円だった。
コンサル会社の社長について、御手洗氏は「高校の後輩でもあり、友人に近い関係。会食で一緒になることもあった」などと説明していた。(中村信義、舟橋宏太)