公益法人への支出削減や民間参入促進を狙い、国土交通省が4月に導入を決めた「簡易公募型プロポーザル」。問題となった道路陥没の危険性を調査する業務では、天下りした国交省OBらが優遇される見せかけの競争性だった。公益法人と違い、民間企業への天下りは厳しい制限がある。関係者は「民間参入を促したいなら、価格競争も含めた公平なルールを導入しないと意味がない」と批判する。
国交省は公益法人の見直し作業を進めるに当たり、外部有識者から「民間との競争や入札条件が重要で、第三者監視が必要だ」との意見を受けていた。
地方自治体が県道などについて同様に発注する空洞探査業務では、受注希望額の安さが考慮されるケースも出てきているが、国交省発注の業務では評価対象になっておらず、業者選定後に具体的な契約金額を決める仕組み。このため、予定価格に占める契約金額の割合は100%に近い状態で、支出削減の効果は出ていない。
道路特定財源から支出を受ける道路関係公益法人を50から16に削減すると決め、改革ぶりをアピールした国交省だが、契約方式変更後も天下り先の道路保全技術センターは存続させた。
国家公務員法では、過去5年間の仕事に関係する民間企業には退職後2年間は再就職できない。だが公益法人のセンターは適用外で、発注経験者のOBが退職後すぐに天下りし、プロポーザルに参加して契約を勝ち取っている。OBが優遇される評価基準が新規業者にとって最大の壁になっている。センター以外で新方式に参加しているのは、空洞探査技術を持つ民間業者1社にとどまっている。
関係者は「時代に逆行して天下りを助長しているとしか思えない制度だ」と話している。【田中謙吉】
毎日新聞 2008年12月28日 東京朝刊