【関西あの事件この事件 世間を騒がせた人たち】
「10億以上は数え切れなかった」とのたまった女性、20億の負債を抱え「裸の王様」と自嘲した小室哲哉被告、「食べ残しとは不本意」と謝罪の最中も強気だった船場吉兆の女将…。平成20年、大阪を舞台に世間を驚かせ、騒がせた事件を関係者のコメントでつづってみると−。
■写真で見る■ 小室被告を待つKEIKOの左薬指には指輪がはめられていた
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■人生リセット
「裸の王様だった。人生をリセットして再出発したい」。
11月、音楽著作権譲渡に絡む5億円の詐欺事件で大阪地検特捜部に逮捕、起訴された音楽プロデューサー、小室哲哉被告(50)は取り調べ担当の検事に対し、そんな反省の言葉を繰り返したという。
90年代にミリオンセラーを連発、一時は年間20億円以上を稼ぎ出して莫大な資産を築き上げた小室被告。しかし逮捕直前には借金総額が約20億円に膨らみ、返済に追われていたことも判明、「時代の寵児」の凋落ぶりが際立った。
逮捕当初から素直に容疑を認め、家賃(月額)200万円以上の高級マンションでの「セレブ生活」から一転、わずか3畳半しかない大阪拘置所の独居房生活へ。接見に訪れた弁護士に「ここは寒い」と弱音を漏らし、差し入れられた母親や妻のKEIKOさんからの手紙に涙を流した。
取り調べでも終始、反省の態度をみせ、「これまで歌詞にチャンスという言葉を軽々しく使っていた。その言葉の重さを理解して、もう一度音楽を作らせていただくチャンスがほしい」と心情を吐露した。初公判は来年1月21日。法廷で何を語るのか。
■このまま刑務所で
「(被害者との)和解に向けて動いている。逮捕はない」。
4月の逮捕前、周囲に自信たっぷりにこう語っていたのは、大阪・東京両地検特捜部で敏腕検事として活躍し、退官後は「闇社会の守護神」と呼ばれた元弁護士の田中森一被告(65)=別の詐欺事件で懲役3年確定、服役中=だ。
刑事事件の依頼者からの預かり金9000万円を詐取したとして、古巣の大阪地検特捜部に詐欺容疑で逮捕された。検事や弁護士としてかかわった事件などの内幕を描いた自伝『反転』(幻冬舎)の出版を機にメディアに盛んに登場していた矢先だった。
逮捕前の取材に「被害者の訴えは一方的なうその主張だ」と訴え、逮捕後も無罪を主張、途中から完全黙秘に転じた。
起訴後、しばらくは「命ある限り闘う」と強気だった。
しかし慣れない受刑者生活に身も心も疲れたのか、検察の証拠書類を目にした頃から「裁判は勝ち目がない」「このまま刑務所で死ぬしかない」などと弱音を漏らすようにもなったという。
■61億円「忘れた」
「10億円までは数えていたけど、数え切れなくて数えるのをやめた」。
こう話していたのは、父親の相続財産のうち約61億円を隠し、相続税約29億円を脱税したとして、相続税法違反(脱税)の容疑で逮捕、起訴された大阪市生野区の会社社長、李初枝被告(65)。
李被告は相続した現金の大半を段ボール箱や菓子箱、紙袋に入れて物置などに無造作にほうり込んでいた。保存状態は悪く、湿気でよれよれになった紙幣もあったため、捜査でも金額の計測には数日間を要したという。
当初は「(不動産業を営んでいた)父親と一緒に仕事をしてきており、自分のお金も含まれている」などと一部を否認していた李被告だったが、逮捕後は「家に現金を保管していることを忘れ、申告も忘れていた」と容疑を認めた。
■消費者の信頼どこへ
5月、牛肉の産地偽装などに続いて料理の食べ残しの使い回しが発覚した船場吉兆。
女将の湯木佐知子社長は「手前どものモラルの問題と受け止め猛省しています」と謝罪する一方で、「食べ残しと言われるのは不本意。手つかずの残された料理」と苦しい弁明も。
結局、失った信用は取り戻せず1カ月もたたないうちに廃業に追い込まれた。湯木社長は「山から転げ落ちるようにキャンセルが相次いだ」と涙を流した。
一方、不正発覚後すぐに謝罪したのが、事故米を食用に転用していた三笠フーズ(大阪市北区)の冬木三男社長(73)。「転売は私の指示でやらせた。経営が苦しくてついやってしまった」と話し、2重帳簿の存在も明らかにした。
問題はことのほか大きく、同業他社の不正が相次いで発覚するなど社会問題化、同社も結局破産を申し立て、来年1月にも大阪、福岡、熊本3府県警による合同捜査本部の立件が待っている。
平成19年秋の会社更生法申請のときから公の場に一切姿を見せないまま、今年6月に業務上横領容疑で逮捕された英会話学校大手「NOVA」元社長の猿橋望被告(57)。逮捕直前には「唯唯、自戒の日々を送っています」とするコメントを発表。府警の調べにも「社会的審判を受けるべく、警察の調べを受けたいと思います」と話した。
■犯した理由は
10月と11月に大阪・キタと大阪府富田林市で相次いだ飲酒ひき逃げ事件。被害者を長距離にわたって引きずり、殺人罪などで起訴されたキタ事件のホスト、吉田圭吾被告(22)と富田林事件の大工、市川保被告(42)はそれぞれ、「執行猶予中だったので逃げた」「飲酒がばれるのが怖かった」と供述した。
吉田被告は当初、被害者への殺意を認めていたが、起訴段階では否認。一方、「事故の記憶がない」などとあいまいな供述を繰り返していた市川被告は、最後的には「居眠り運転をしていた。引きずったまま運転すれば死ぬかもしれない」と認めた。
あぜんとする供述をしたのが、10月に大阪市淀川区で男性を180メートル引きずって重傷を負わせた中学3年の女子生徒(14)。
「ゲームセンターで遊んでいるうちに車を運転したくなった」。
父親の軽ワゴン車のキーを無断で持ち出し、ギアの入れ方も知らないまま車を運転したという。
吉田被告と同様に、最初は容疑を認めていながら否認に転じたのは、犯人が逮捕された放火事件としては戦後最大の犠牲者(16人)を出した大阪・ミナミの個室ビデオ店放火事件の小川和弘被告(47)。
火災現場から逃げ出し、保護しようとした警察官に「すみません。すみません」と繰り返し謝った。
逮捕後は「生きるのがいやになった。死にたいと思って火を付けた」と供述していたが、弁護士との接見を重ねるごとに供述は変遷していった。「火をつけた記憶がない」「眠くなり気が付いたら煙が充満していた」。弁護士には「検事は敵なんですか」とも尋ねたという。
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