県立病院の医療費支払いを拒否したとして、県が退院した男性を民事提訴した問題で、県が勝訴後に男性の銀行口座を差し押さえ、一部を強制徴収したことが28日、分かった。総務省によると医療費未収金に対する強制徴収は極めて異例。県は膨らむ県立病院の未収金対策として、悪質な滞納については今後も法的措置を辞さない構えだ。【伊澤拓也】
県病院局によると、県は04年夏、県立心臓血管センター(前橋市)に糖尿病治療のため約2週間入院した千葉県浦安市の60代男性に医療費約25万円を請求。しかし、男性は「2週間の後半は無理やり入院させられた」と支払いを拒否し、再三の督促にも応じなかった。
県の独自の調査で、男性が千葉県や東京都内に高級マンションを借りていることが判明。資力があると判断して県は07年8月、市川簡裁に支払いを求め提訴し、今年2月に全面勝訴した。これを受け、6月に銀行口座を差し押さえ、預金全額約7万円を徴収。ところがその他の口座は判明せず、12月に同じ口座を差し押さえようとしたところ、既に閉鎖されており7万円以上は徴収できなかった。
県立4病院では未収金の累積額が07年度末に約9700万円と5年前から倍増。県病院局は「資力があるのに支払わないなど悪質な場合は今後も法的措置を検討したい」としている。
総務省によると、都道府県立病院の未収金は年々増え、同年度末に累積額は約87億円に達した。同省は「未収金は病院経営を圧迫する一因になっている。各自治体が個別に取り組むことは問題ない」と話す。
毎日新聞 2008年12月29日 地方版